第37話 エロすぎる女、カルミア

「……なっ!? バカな!! エロすぎる!!」


 翌朝、集合場所として指定された王城の裏口に行くと、そこには儀式に必要な道具が積まれた大きな馬車に御者が数名と──その御者に指示を出していた一際ケツと胸がデッッカイ女性がいた。


 紫髪の毛先が外ハネしたロングヘア。その美貌もさることながら、特筆すべきはどんなタイミングでも視界に入れてしまうほどのクソデカおっぱいとムチムチした太もも。あとケツ。


 ──ごくり……エロすぎる……!!


 黒と白の修道服を着ているのも俺的にはプラス。シスターがこんなエロすぎたらダメだろ!! どうなってんだこの国!!!


「あら? ──こんにちは【聖騎士】アルス様。わたくしは《神職教会》から派遣されたシスターのカルミアと申します。以後、お見知り置きを」


 緩やかにお辞儀をするカルミアと名乗った女性。

 俺はその瞬間にブルンッ! と揺れたおっぱいしか視界に入ってこなかった。……マズイ! 今は戦闘中ではない! ムスコは戦闘形態に移行しようとしているが、それを必死で押し留める。


 まずい……止まらない……よりにもよって今日は少しピチッとしたズボンを履いてきてしまっている。要は起立! 気をつけ! したら一発でバレるってわけだ。


「……くっ」

「あの〜、どうかなさいましたかぁ〜?」


 ち、近寄るなおっぱい!! 

 近づいてくるカルミアに何とも最低な罵倒を心の中でしたためつつ、俺は今すぐに勃起を抑える方法を思案していた。

 ……ノーハンドフィニッシュ……いや、俺は未だその領域に達していないため却下。結局フィニッシュしたら勃ってることバレるし。


 ……母親の顔を思い浮かべる。ダメだ!! その程度で萎えるならすでにやってる!! 想像で萎えるのは今目の前にエロすぎる実物がいるから不可能……!!


 ならばできることは一つだけ!!!

 またこんなことでスキル使ってごめん!!!


「【性なる盾ホーリーシールド】!!」


 瞬間、光り輝く盾が出現し、俺とカルミアを分断する。エフェクトはエロすぎる女の姿を覆い隠し、俺はスキル使用によって性欲が一旦落ち着く。

 ふぅ……何とかなったか。

 半賢者になった俺は、目の前で引き攣った顔をしながら呆然としているカルミアにふっと笑いかける。


「すまない。邪悪な気配を感知した気がするんだが気の所為だったようだ」

「そ、そうですかぁ〜……」


 更に頬が引き攣ったんだけど流石に無理のある説明だったか?? ってか邪悪な気配ってなんだよ。おっぱいの揺れる気配しか俺には分からねぇよ。


「「おお、これが【聖騎士】のスキルか……!」」


 内心で少し焦っていると、なんだなんだと見に来た御者たちが俺の【性なる盾ホーリーシールド】を見て感動していた。

 これが性欲から作られたスキルって知ったらコイツらなんて思うんだろうな。男だったら案外賛同してくれる可能性も……無いか!!


「俺の名はアルス。知っての通り【性騎士】の職業を授かった者だ。出身は違えど聖女さまを護るという志は同じはずだ。よろしく頼む」


 知っての通り(知られちゃ困る)。

 にしても勃起しないために割と性欲を消費したお陰でスラスラ挨拶が出ますわ。

 こんな硬派な性格では決してないですからね。幻滅しないでね。


「えぇ、こちらこそよろしくお願いします〜」

「「あれが【聖騎士】……かっけぇ」」


 俺の挨拶に警戒が緩んだのか、カルミアは一転してニコニコと微笑みながら俺の手を取った。


 ふっ……危ない危ない。スキルを使ってなかったら触られただけで俺のムスコがヒートアップするところだった。

 というか御者くんたちさっきから一言一句違わずに同じこと言ってるけど示し合わせてんの?


「護衛の配置はどうなっている?」

「実質的な護衛はわたくしとアルス様だけですの。ですから、馬車の外と中、両方を交互にわたくしと交代しながら進んでいく流れになっています〜」

「なるほどな。《神職教会》の人間に戦えるイメージはあまり無いが……腕に覚えは?」

「──試してみますかぁ〜?」


 カルミアはおっとりとした声音だが、どこか挑発するような表情で懐から短杖を取りだす。

 魔法使いか。《神職教会》の内部の人間は魔法訓練を受けてるって噂があったけど本当みてぇだな。……それなら心配する必要はないか。


「……いや、やめておこう。味方同士で消耗している場合ではないからな」

「うふふ、それもそうですねぇ」


 口元に手を当ててクスりと笑ったカルミアは、懐に短杖をしまい込んで出発の準備のために御者に再び指示を出し始めた。


「ふぅ。お、性欲戻り始めたな」


 なぜか今回は半賢者モードだと堅苦しい口調になっちまったんだが、これって何かのパターンとかあるんかな? 完全に性欲を失うとが出てくることは知ってっけど。

 そんなことを考えていると、リースとメイに連れられたルナがやってきた。


 いつもと変わらない服装だが、カモフラージュ用なのか、少し見すぼらしいフード付きの外套を手に持っていた。一応内密の公務だからな。変装とまでは行かずとも姿を隠せる物は必要だ。


「よっ、おはよう。メイも」

「おはようアルス」

「おはようございます、アルス様」

「……私はもう何も言わんぞ」


 意図的に無視したリースは、ルナの前だからか青筋を立てながらもキレることは無かった。

 クソ……! やめろよ! お前がそこで大人の対応したら俺が完璧に悪いみたいになっちゃうだろ!! 悪いよ!! ごめん!!


「……リースもおはよ。俺がいない間の王城は任せるぜ」

「貴様に言われんでも分かっている。──次に聖女さまが王城に足を踏み入れる時は、安心できる場所になっていると約束しよう」


 尊大な口調で宣言して見せたリースは、口調に見合うだけの説得力があった。きっとルナのためなら何でもできるだろうからな。


 コイツの忠誠心も見上げたもんだぜ、と思っていると、不意にリースが俺の耳元に顔を寄せてきて──不覚ながら整ってはいるリースの容貌に一瞬だけドキッとしてしまった。


「……っ!」

「……どうにも《神職教会》の動きがきな臭い。貴様自身も注意することだ。対策は私も考えているが……」


 《神職教会》の動きがきな臭い、か……俺もそれは薄々感じていたことだ。

 巡礼の規模を広げるというのもどことなく裏を感じるのも事実。……だがまあ、警戒する以外に対策のしようがない。

 とりあえず俺はドキッとさせられた意趣返しに、リースの耳に口を寄せてふぅ、と息を吹きかけた。


「うひゃぁっ!? な、な、な、いきなり何をしてる貴様!!」

「いつまでもコソコソしてたら怪しまれんだろ。カルミアにはハエが止まってたとか説明しとくからさ」

「だとしても別に息を吹きかける必要は無いだろうが……!!」


 意外と純情なのか頬を赤くしながら取り乱すリースは、ギンッ!! と俺を強く睨んだ。

 うん、まあ息を吹きかける必要は無いぞ。

 ……にしてもちょっと可愛いと思ってしまった過去の俺を消滅させたい。


 睨むリースにハハハ! と笑って躱す俺に、メイが顎に手を当てて何かを俺に言いかける。


「アルス様……あのカルミアという女性……いいえ、何でもありません」

「分かってる。体捌きが変だからな。俺も警戒はしてるよ」

「……っ、やはりですか」


 俺が揺れるデカパイだけを観察していたとでも思ったか? ……間違いではないけど、周辺視野で何となく読み取れることもあるにはある。

 あのカルミアという女は──、


 ──魔法使いにしては体捌きが前衛寄りだった。


 ……魔法が使えることに嘘は無いだろうけど、多分それだけじゃない。何かを隠していることは間違いないだろう。

 にしても観察眼の鋭い俺が気がつくのは良いとして、メイもそこに気づくとは思わなかったな。


 俺よりも戦闘経験を積んでいる人間は伊達じゃないか。


「なんにせよ、俺がやることは一つだけ。聖女さまを護る。一旦はそこに全集中するさ」


 そう言って笑いかけると、メイとリースの二人は少し安堵したように息を吐いた。

 そしてルナはぐっと拳を握って言った。


「いざとなったら……金的する」

「それはマジでいざとなったらな!?」


 魔力強化の金的とか男にしてみれば反則的な攻撃方法なんだよなぁ……!!

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