巡礼任務編

第35話 新テクニックは突然に

「【聖騎士】の誕生か。……これはまた


 壮厳な教会の一室。

 蝋燭が灯った仄暗いその空間で、一人の男が頬杖を突いて呟いた。その口調は忌々しいと言わんばかりに歪んでいて、どこか面白くなさげでもあった。


「いつの世も【聖女】と対等なのは【聖騎士】のみ。【黒騎士】も【白騎士】も、所詮は上位騎士でしかなく、伝説と肩を並べることは不可能だ」


 【勇者】が出現しなくなり数百年が経った。

 今や伝説として名を残した者たちの職業は【聖女】を置いていない──はずだった。

 【聖騎士】の出現、それは男にとって寝耳に水の出来事だった。


「忌々しい……このままであれば【聖女】は我々の手に落ちていたものを……!」


 ダンッ!! と怒りに身を任せて机を殴った男は、一度ふぅと息を吐いて落ち着かせる。

 そして、冷徹な──蛇のような目で言った。


「対策を練らねばいけない。なに、時期が時期だ。ヤツを仕留める方法は幾らでもある……」


 そう言って、男はニヤリと笑った。

 

◇◆◇


「足が止まっていますよ……ッ!」

「違うなメイ。足を止めていたのさ!」


 視姦チャージ完了! 性欲装填ッ!!


 フルマックスの──!!!


「【性なる盾ホーリーシールド】ォ!!!」


 俺は光り輝く盾を前方に設置し、こちらに向かって木剣を振り上げる金髪ポニーテールの美女……メイの行く手を阻む。

 そして俺はその光り輝くエフェクトを利用し、姿を眩ませてメイの死角から袈裟斬りを仕掛ける。


「くっ……!! 降参です……まさか【聖騎士】の技を囮にするとは……流石です、アルス様」

「小賢しい技だけどな。かなり」


 俺は苦笑しながら褒めるメイに謙遜する。

 ……いやマジで褒めないでくれると助かるんだわ。俺の心が辛くなる。


 ──さて、現在はスキルあり、木剣での実戦訓練の最中だったんだが、見事に俺はメイに一撃を与えて勝利を手にすることができた。


 流石にレベル差があるから、どうしても真剣じゃ勝ち目が薄い。いつも小手先の曲芸じみた技で勝っているが……今回は割と真正面から勝てたんじゃないだろうか。

 それもこれも、バレれば(社会的に)終わる実践的な技を会得できたからである。


「視姦で瞬間的に性欲高めるとか言えるわけねぇ……」

「何か言いましたか?」

「イエ、ナンデモナイデス」


 俺は考えた。

 性欲というものは非常に残念ながら限りがある。

 勿論時間を置けば回復していくものだが、最大値がある以上は、一度に使いすぎるとその後の技を出す時に支障をきたす可能性が高い。

 だからこそ俺は戦闘中に性欲を回復する方法を編み出した。

 それこそが──、


 ──視姦チャージテクニックである。


 これは戦闘相手がという何とも不確定要素が高すぎる技なのだが、その効果は折り紙付き。

 簡潔に技の説明をするならば、戦闘中にメイの揺れるおっぱいを全力で観察し、性欲をフル装填するという技能だ。まったく……最高だぜ!


 更には日常生活で胸をガン見したらバレるリスクを孕んでいるが、戦闘中であれば戦闘に集中しているという言い訳ができるため見放題なのだ! いやー、これを編み出した時はあまりに己が天才すぎて笑っちゃったね。やっぱり俺って戦闘テクニックはかなりあるんだなって。

 

 ──ちなみにデメリットはおっぱいに集中しすぎて割と被弾しちゃうことです。メイに当てられた肩とお腹の青痣が疼くぜまったく。


 ……あと俺は別に巨乳だけがエロいと思っているような浅い人間ではないので、視姦テクニックは俺がエロいと思えば何にでも適用できる。


「ふぅ……ちょっと休憩するか」

「そうですね。かなり汗もかきましたし」


 メイが恥ずかしそうに俺と少し距離を取った。

 ん? なんか距離空いてんな? と疑問に思った俺は人間三人分の距離感を一人分程度に詰める。

 するとメイはまたも距離を空けて座り直した。

 え、もしかして俺嫌われてる? 


 ま、まさか戦闘中におっぱいをガン見したのがバレた……!? マズイ……これは非常にマズイ……何がマズイかって? マズイもんはマズイんだよ冷静に考えれば分かるだろ。


「あ、あのメイさん? なんでそんな距離空けるんすか?」


 心臓がバクバクする。

 意を決して問いかけると、メイは汗ばんだ頬を少し赤らめて恥ずかしそうに答えた。


「そ、その……汗臭いでしょうから」


 ──ビキビキビキッ!!

 俺の脳内でそんな効果音が響き渡った。勿論、元気よくムスコが手を上げた効果音である。


 汗ばんだ姿だけでエロいというのに、それを気にして恥ずかしそうにしている金髪美女の表情に勃たないヤツがいたら俺は正気を疑うね。


 ちなみに「汗臭いでしょうから」という言葉の矛先がもしも俺に向けられたものであるのならば、鉄のように硬い下腹部は一瞬にして萎びること間違いない。……え、違うよな?


 一瞬そんな悪い想像が頭をよぎったが、まあ文脈的に違うだろうと自分を納得させることで事なきを得た。


「練習で掻いた汗は努力の証拠だぜ? 臭くても臭くなくても全然気にしないさ。そもそも臭くないしな」

「そ、そうでしょうか」


 あとぶっちゃけめちゃくちゃ美人な人が汗臭いのは正直萌える、と言おうとしたが絶対に引かれるのでやめておいた。


「……メイさん?」

「なんでしょうか」


 気にしてないと言った途端に少し距離を詰めてくるメイ。

 思わずメイの名前を呼んだ俺だったが、普通に考えて距離が近いのは喜ばしいことなので何も言わないでおくことにした。性欲関係無しに培った信頼感を感じるし。


「ふぅ〜、そういえばあれから尋問の調子はどうだ? まだ何も喋らないんだっけ?」

「えぇ。あの男は相当帝国への忠誠心が高い……いえ、忠誠心を植え付けられた……といったところでしょうか」

 

 ──聖女さま、並びに俺を襲撃してきた帝国の男はメイとリースが男を気絶させた後、捕縛に成功した。


 【自殺の禁止ピースエリア】を発動させた上での尋問の調子は良いとは言えず、どれだけ痛めつけても情報を吐く気配は一切無い。


 ……二度も襲撃されてるからな。立て続けに暗殺者がやってくる可能性もあれば、失敗したことを鑑みてしばらくは静観する可能性もある。

 つまりは何も分からねぇってことだ。


「忠誠心を植え付けられたってどういうことだ?」

「……洗脳魔法であればリースの能力によって解除できます。しかし、それが効かなかった。……つまりは、魔法に頼らず原始的な洗脳を施した可能性があるということです」

「うへぇ……えげつない真似しやがるな」

 

 要は魔法ではなく、肉体的や精神的な痛みによる洗脳を長時間施した可能性があるということだ。想像しただけでも金玉がヒュンッてする……。


「ですから……」

「……これからもそんな洗脳された兵士が襲ってくるかもしれない、ってことだろ?」


 言い淀むメイに俺は笑って答える。

 すると、メイは不思議そうな目で俺を見た。

 ハッ、何も予想できたことだし、俺がすることはこれからも変わらねぇだろ。


「俺の仕事は聖女さまの……ルナの護衛だ。襲ってくるヤツを返り討ちにすりゃ良い、って考えたら簡単だろ? そのための訓練だ。そのための努力だ」

「アルス様……私も微力ながらお手伝いします」


 瞳を潤ませたメイが感動を顕にしながらそう言った。当たり前なこと言ったんやけどな。

 うん、というかメイがいないと俺の性欲装填もできないからこちらこそよろしくおなしゃす!!


 なんてゲスな思考を繰り広げていた俺は、メイと一週間後には引き離されるなんて──この時は思いもしなかったである。



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新章開幕です!

投稿再会していくのでよろしくお願いいたします!

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