第27話 特訓
それから、俺たちは帝国への対策を練り始めた。
だが、結局のところ、国と国の面倒事が絡まってる以上は、すぐに行動に移すことは難しい。
「私たちはあくまで騎士。国政や外交は王族の役目ですから、私たちが行動におこすことは非常に難しいでしょう」
「だよなぁ……。しばらく三人体制での護衛にするか。陛下にも事情を言えば取り計らってくれるだろ」
「それしかあるまい。……ふふ、つまりは聖女さまとメイとずっと一緒にいられるということだな……邪魔者が邪魔だが」
「自分のことかな?」
「あ?」
「あ?」
メンチを切り合う俺とリース。最早止めるヤツもツッコミを入れるヤツもいなくなってしまった。
どことなく微笑ましい視線を向けてくるのはやめて欲しいんですけども。仲悪いぞ、見て分かる通り。
「あの……」
すると、ふと聖女さまが声を発した。
三人で一斉に聖女さまに視線を向けると、彼女はおずおずと控え目にとんでもない提案をした。
「自衛……できる力が欲しい。だから、三人に鍛えて欲しい」
「せ、聖女さまがそんなことをする必要はありません!! 我々騎士にお任せください! 主に戦わせる騎士など騎士ではありませんから!」
「それでも……」
隣で言い争う聖女さまとリース。沈黙を保つ俺とメイ。
俺は会話を聞きながら、現在進行型で
──マズイ。性欲に頭を支配されていて会話の七割も入ってこない。
過剰装填された性欲。ヘタレ童貞が幸いして未だ自制の効く身ではあるものの、脳内でピンク色の妄想が常に繰り広げられる状態というのも厳しいものがある。
……うぐぐぐ、このままでは冷静な判断ができなくなる……。
前屈み姿勢であることを除けば取り繕うことはできるけども、後々になんであんなこと言ったんだ……みたいな後悔に陥ることは間違いない。
溶ける……理性が溶ける……。
「おい! 貴様はどうなんだ!!」
「ええやん! ええやん!」
「なっ!? 聖女さまに戦わせるなど騎士として恥でしかないだろう!?」
「ええやん! ええやん!」
自分でも何言ってんのか分からんくなってきた。
だが、俺の言葉にメイが被せるように何かを言ったのは分かった。
「いえ、アルス様の言うことにも一理ありますよ。護衛といっても、常に守ることは難しいでしょう。いざとなった時に、逃げる力……すなわち自衛する力を持っておくことは必要かと思います」
「メイ……」
「ぬぅ……それはそうだが……」
「ですので、護衛は一旦私とリースが担当し、洞察力の優れているアルス様が聖女さまの修行を行うのはいかがでしょうか? 私たちでは立場上、聖女さまに甘くなってしまう恐れがあるでしょうから。構いませんか? アルス様」
「おっけー!」
よく分からんけど美少女に修行をつけることになったぜ! ヒャッホイ!
☆☆☆
一発だけ抜いてきた。
それでも渦巻く性欲はとめどないが、思考は幾らかマシになった。
場所は変わって、王城の鍛錬場。どうやら俺は聖女さまに修行をつけることになっていたらしい。
おかしい……性欲に支配されていて請け負った記憶がねぇ……!
まあ、美少女に修行つけられるなら良いか。
「それじゃ修行を始める。期間はザッと一週間だな」
「どうして一週間……?」
「メイの話だと、あの暗殺者が失敗したことが分かれば、口封じも兼ねた次の追手が来る可能性が高いらしい。んでもって、帝国と王国の距離と情報の伝達速度を考えたら一週間くらいしか修行する猶予がどうもねぇらしい」
つまりは、一週間で自衛できる最低ラインまで聖女さまを仕上げなくちゃならねーわけだが……。
正直難しいと思う。そもそも俺が苦戦する相手なら、生半可な力を付けたところで返り討ちに合うだろう。
……不意を突くことくらいはできるかもしれねーけど……。
「簡単に言ったら、厳しく行く。それでも大丈夫か?」
「……もちろん」
──口数も声量もなくても、その瞳には熱量があった。
ま、熱意に免じて俺も精一杯教えることにするか。
少し時間があって一発抜けたお陰で、今の俺には冷静さがある。……ふっ、理路整然で効率的な修行の計画を立ててやらぁ!! ハッハッハ!
「そんなわけで、まずは聖女さまがどれくらい動けるのか確かめるために、限界まで鍛錬場を走ってもらう。あくまで基礎体力が知りたいだけだから限界を超えなくても良いぞ」
「分かった」
グッと拳を握り締めてやる気をあらわにする聖女さま。
ちなみにいつもの姿では動きづらいため、今の聖女さまはリースの着ていた比較的ラフな騎士の制服を身に着け、長い髪は一つ結びにしている。
非常にグッドです。リース、今だけは褒めてやろう。
ハッ! 危ない危ない。気が抜いたらすぐに性欲に比重が傾いちまう。
今は真面目な修行パート。これからの未来を守るための大事な──。
そんな思考は──汗ばむ聖女さまのエロすぎる姿を見て消し飛ばされた。
「ハァッ……はぁっ……!」
気合いで鍛錬場を五周した聖女さま。
魔力強化無しかつ、これまでまともな訓練をしたことないことを考えれば悪くない体力をしている。
……とかはどうでも良くて、今は息切れして汗ばむ姿の聖女さまが非常に扇情的でやべぇって話をしたいんだよな。
「──ッ」
──マズイ……! 勃起の気配!
俺は急いで座り込む。端から見たらまるで悔しがってるように見える姿勢だ。
「……はぁっ、私が……不甲斐ない……せい?」
聖女さまが表情を暗くして何かを言っているが、性欲のコントロールに勤しんでいる俺には何も聞こえなかった。
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