呪われ騎士のダンジョン攻略～昼は先輩の少女冒険者と周回し、夜は黒幕魔法少女と暗躍します～

　水面を激しくシェイクしながら爆走してきたのは、大きな木像だった。

　木像は僧侶の格好をしており、鋭い目つきで私たちを睨み付けてくる。

　――大きい！　かなりの大型だな！

　未知の敵との遭遇に、私は盾を構え、アリシアはレイピアの刃先を向け、シーラは自動小杖を構えた。ホーネットは後方で大きなカバンを盾にして待機している。

　身構える私たちに対し、僧侶木像は手に持った木の棒を振り上げ――

　あたりの木魚を叩きまくりはじめた！？

　――同士討ち……なのだろうか？

「違うわ鎧ヤロー！　コイツ他の魔物に魔力を注入して強化してる！　面倒な手合いね。ん……？」

　この場で唯一魔法について詳しいシーラが雷撃の掃射を加えながら否定すれば、叩かれた木魚達が元気に飛び跳ねながら突っ込んできた。

　敵を通さないように盾で殴り、掴んで消し、体を張って受け止めるが、私が止める木魚の数より、敵が強化する数の方が多い！

「はあああ！」

　アリシアが隙を見て連続突をお見舞いしているが、それで対処しきれるような数ではない。

　しかし、なんだろうかこの感覚は……。

　体が軽くなっていく……？

「うわっ！　後輩殿！？　体から黒いモヤが出ているぜ！？　大丈夫なのか！？」

　言われてみるとサラサラと黒い何かが体中から出ていっているみたいだ。

　――何事なんだ！？

「あー、どうやら少しずつ解呪されているみたいね。待っていたら呪いが解けると思うわよ？　おめでとう？」

　そう言っているシーラからも白い何かが出ていっているぞ。

　――その白いのは？

「私にかかっているドミネ（しはいの）……コホン。特別な魔法が解けかかってるみたいー」

　自分に不利なことだからか、棒読みで申告したシーラはブイと目を明後日の方へ向ける。

　呪いを解くチャンスみたいだが、そうなると話は変わってくる。さっさと狩るか……。

　グッと拳を握った私は水に濡れるのを解禁して、木像へ突撃する。木魚は無視だ！

「ええ！？　どうしてよ！？　決断が早すぎじゃない！？」

　接敵、振り下ろされる木の棒を盾で弾き飛ばした私は、最速の貫手で木像の胸を抉る。

　――今までのお前をみていたら、当然だろうが！

　木像は白い焔に灼かれ、消えていった。

　後には宝箱が残されている。

「いやったー！　お宝よ！」

　強化が切れてしまった木魚を撫で斬りにしながら、アリシアが高速で宝箱に抱きついた。

　そのまま解錠に集中しているみたいなので、集まってくる木魚を適当に蹴散らして援護する。

「いや、なんでよ？　迷う鎧ヤローをからかってやろうと思ってたのに！」

　なんかシーラが邪悪なことを言ってるけど、無視だ無視！

「へへっ！　今日も大漁だぜ！」

　頑張って魔石を拾っているホーネットに、なんだか癒されてしまうぞ。体は少し軽くなった気がするけど、どっと疲れるダンジョンだった……。

　次は、もう少し楽なダンジョンが良いかもしれない。帰ったらミラに聞いてみようか。

　まずは……目の前の問題を片付けよう。

　グリーブに入り込んでしまった水を何とかしなければ！