植物言語処理学会

 とある学会の発表会場で一つのプレゼンが終わったところであった。その学会の名前は植物言語処理学会。発表論文のタイトルは『GPTを用いたスギ雌株生体信号の自然言語化』であった。

 発表者の若手研究助手に大学教授が質疑応答をしようとしていたところであった。なお、この二人は師弟関係である。


「きみはこれをマジメにやってるのかね?」

「ええ、私はマジメです。生成AIを用いて植物の生体信号を自然言語を出力しました。入力が植物の生体信号で、GPTを用いて資源言語に出力してみました。スギ花粉の思考や感情が理解できると思います」


「君は権威ある植物言語処理学会をバカにしているのかね?ハクション。君の発表は主観に満ちている。ハックションハックション」

「いえ、そんなつもりは」


「スギ花粉で苦しんでいる人がこんなにいるんだよ。スギ花粉さんこんにちわだなんて発表をよく作れたな。ハックション、ヒィクション」

「先生、科学は正しい観測によって行うべきです。それはスギの立場を無視し過ぎではないでしょうか。スギも立派な生物です」


「いや、ちがう。スギは花粉症患者の敵だ。つまり、日本人全員の敵だ」

「それこそ、ただの主観です。今の発言はスギに対する悪意に満ちています」

「ハクション、フィクション、ファンクション。」

「だいじょうぶですか?なんだか英語っぽく聞こえるのですが」

「こんな話、ウソだ。ウソに決まってる」


 タイムキーパーの学生がチーンとベルを鳴らした。質疑応答の時間が終わったのだ。若手研究助手は、深々と頭を下げながら答えた。若手研究者は最後の「ウソだ」の言葉が気になってしまいこう発言した。

「それを言うんでしたら、せめて、植物言語処理学会を毎年、4月1日にやるのやめませんか?」

 しかし、教授は花粉アレルギーのせいでクシャミばかりであった。

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スギ花粉にあこがれて 乙島 倫 @nkjmxp

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