第四話 外の世界



孤児院訪問当日の日。

朝からメイド達はミレイナをどう綺麗にするかうずうずしている。

(今回は孤児院だから、平民っぽい服装が良いんだけど…)とだけ心の中でミレイナが思っていると突如一人のメイドに抱え込まれ、すぐさま浴室に連れ込まれた。

赤子の肌が傷つかないように優しい手付きで現れながらマッサージをしてくれた。

その後、優しい温風を吹いてくれる魔道具を取り出した。

それを初めて見たミレイナは驚きを隠せないでいた。

「やんやよよれ!(なんなのそれ!)」

「お嬢様、これを見るの初めてですか?」と言いながら、メイドがそれを持って見せてきた。

「これはオンプウキという魔道具なんですよ。ここの炎属性の魔法石を嵌めて起動するのよ」と軽い説明を受けてこの世界がどういうモノか少しだけ理解した。

(成る程…一応この世界には魔物という存在はいるみたいね…)

その上、人間には魔法というものがちゃんと存在してる。

「それに魔法を扱えるものは一部の人しか持ってないのです」

その言葉を聞いてミレイナは呆然とした表情をしながら密かに考えた。

(もしかしてこの世界特有の職業とかあるのかな…)

そうして考えてる間にメイド達はさっさと彼女を綺麗にするため今度は洋服選びだった。

すると、目の前でヒラヒラするものが一瞬だけ見えてハッと我に返った。

(え?)

メイド達が用意した洋服はどことなく今回の孤児院の訪問だからそんな高級な服は逆に目立ってあまりよろしくないと考えていた。

だから、ミレイナは目の前にあるそれを見て唖然した。

(本来の目的忘れてない?)

それで苦情を言おうとして、口を動かそうとしたとき不意にノックの音がした。

その音に一人のメイドが近寄りドアを開けてやるとそこに立っていたのは、綺麗めのシャツとチェック柄で茶色のベストを着て首元には同じ色のネクタイを身に付けて茶色の長ズボンとパンプスを履いていていかにも商人の息子のように見えた。

その方が動きやすい形になるだろう。

ならば彼女も同じような服装が良いだろう。

「にーに!」と言いながら彼の着ている服に指を差した。

その瞬間、メイドが今必要な服装が何なのか漸く理解し、すぐさまクローゼットの中にあるルーネと似たようなタイプの服を探しだし、それに着替えさせた。

似ている要素として説明すると、質のいい茶色のチェック柄のワンピースで髪はツインテールにして繋ぎに綺麗なピンクのリボンをあしらった。

「まぁ、お可愛いですよ!お嬢様!」

「ほぉ、僕とお揃いかぁ」とそれぞれの感想を述べるメイドと兄のルーネ。

二人が熱に入ってる内にもう一人のメイドが姿見を持ってきてくれてミレイナの“今”の姿を見せてくれた。

その瞬間、二人が黄色い声を出す理由が分かって、その上でとびっきりの笑顔を見せた。

(かなり可愛く着飾ってるね…)と服装に満遍なく見てからルーネに抱き抱えてもらうよう両手を伸ばして催促した。

「だーお」

そう言うと、彼はそれに答えミレイナに近づき洋服にシワが出来ないように丁寧に抱き抱えた。

「それじゃ、二人のところに行こうか」

そう言ってから彼は踵を返し、部屋を退出するとその背後から二人ほどメイドが着てきて、後に残ったメイドは部屋の片付けのために残ったのでした。


それから彼らはスタスタと歩いていくと玄関ホールに両親を中心にメイドが両端に一列に並び姿勢正しく立っていた。

そんな両親の見た目はやはり少しジミめの服装になっているが商人のような気品のある服装になっていた。

母親の方はちゃんと行く場所を理解してるのかコルセットをしているようには見えなかった。

二人の服装を見ていたルーネは平然としていて「お待たせしました」と声をかけていた。

けれど初めて見たミレイナはあまりの美しさに言葉を失っていたが心の中では言葉が止まらなかった。

(品格を下げた服装だとしても二人の滲み出る貴族感って止められないのね…。家族の遺伝子ってどうなってるのだろう…)

自分自身はまだ赤ん坊だから貴族の気品さなんて身に付いてないから“平民”と言われて間違えられそうなんだがと最後の方では自分自身の卑下とも言っていいくらいの羅列だったので表せないが、そんなことも気にも止めず両親は彼に声をかけたことですぐに振り向いていた。

「ルーネ、ミレイナ。随分可愛く着飾ったみたいだな」

「お父様!お母様!」

「とーあ!かーあ!」

最後のミレーネの返事はルーネの言葉を真似したんだろうとここにいる皆はそう思った。

そんな可愛さに表情を動かさずに心の中でうっとりしていたけど背後にいる執事がゴホンと咳払いをして、父親が我に返り皆に声をかけた。

「さて、支度は終わったみたいだし早速向かうとするか」と言いながら彼はルーネに抱き抱えてる彼女を自分の腕の中に入れた。

それから皆は玄関の方に向きをかえ、執事が玄関を開けた。

すると、そこには広大な外の世界が広がっていた。

ミレイナはこの時初めて外に出るのだ。

「ほあーーー…」

自分の家は大きな屋敷だから玄関周りは大理石の道路と左右には綺麗な花が植えられていた。

その花は地球で見たものと見たことのないものがあって、ようやく始まるのだと彼女自身心の底から別の世界に生まれ落ちたのだと実感した。

暖かい家族に囲まれて何度も朝と夜を重ねても何処か夢ではないかと隅の方で思っていた。

だが、この光景を見れば誰もがそれを払拭出来るだろう。

(さて、私の新しい仕事に取り掛かるとするか)

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