第三話 新たな固有能力
彼女は生まれた時からこうではなかった。
ミレイナの口から溢れた「愛なんて信じない」という言葉。
それは井川として生きていた時に探偵みたいな仕事をして客観的に愛を信じなくなったのか違う、彼女は子供の頃から悲惨な経験していた。
子供の頃彼女の家は順風満帆な普通の家族だった。
しかし、父親が会社で若い子に現を抜かしこれ見よがしに浮気をした。
そのせいで母親は狂ってしまった。
何度も暴れたり、手首を斬ったりした。
そして死にきれなくて娘である玲を殴った。
そのせいで近所の人に児童相談所に連絡し母親は警察に連れていかれ、そのまま精神病院に入院した。
それから玲は孤児院に預けられた。
あっという間の出来事に玲は心から決意した。
「愛なんてあるから人は愚かになるんだ!」
それからは、ひたすら勉強しそしてそんな努力家が中学生になる頃に玲を引き取りたいと言う人間がいた。
その人は浮気して出ていった玲の父親だった。
それも浮気した女性を引き連れて、さらにあんなに優しそうな人だったのにどういうわけか傲慢に染まっていた。
それで、彼はこう言い放ったんだ。
「過去の事は水に流して、俺達と一緒に暮らさないか?」
「あの時は貴女のお父さんを奪ってごめんなさい」
こんな虫の良い家族があっていいのだろうか…
そんな思いが心に宿り、そしてひたすら勉強していたお陰であらゆる知識が頭に入っていた。
そして、ある仮説を立てた。
玲自身に多額の保険金を入れているのではないかと、だから彼女は子の提案を敢えて頷いたいのだ。
そしてあらゆる思考を逆手に取るために…。
「良いよ。でも許した訳じゃないから」と冷たく返したら二人は何も知らないみたいで大いに喜んでいた。
それからは彼女の戦いが始まった。
それらの夢を見て“ミレイナ”として見ていた彼女は本来の“井川 玲”としての言葉と目線で送った。
そして、“井川玲”の戦いは主に心理戦だった。
相手は愚かな娘だろうと考えてる辺り掌を転がすのは簡単だった。
“まぜるな危険”と書かれた洗剤を使って事故を装ってきたり、帰り道辺りで通り魔や道路に突き出してくる人間になったりとある程度証拠が残りそうな事ばかり起こしていた。
しかし、玲はそんな証拠を残すべく孤児院の院長に携帯を借りられないか相談したら快く承諾してくれた。
どうやら、その人も彼女の両親が妖しいと思ったのだろう。
だから、少しの間だけ貸してくれた。
まずは動機とも言える言質による証拠を得るために隠しカメラとしての役割を与えた。
二人がいつも密談をしてる場所は把握してる。
そこにバレないように院長の通知を全部オフにしてムービーだけスイッチいれた。
その様子をずっと遠くで見ていて自分でもハラハラしていたのを心と言うより魂が覚えていた。
「こうして地道に工作しまくっていたっけ」
そうして言葉にした後、場面が切り替わり今度は高校一年のある部屋に移された。
そこは、自分の目的が早くに叶えられ両親と彼女の親子としての縁を切ることに成功した。
その代わり彼らの母方の父が名乗りを上げある程度の支援と保護者としての名前を貸してくれると。
「執拗に求めた結果、大いなるもたらしてくれた」
それでこの賢い頭を使って何とか寮生の奨学金を狙っての試験を問題もなくクリアし、そして入学と入寮の権利を両方手に入れ、さらに奨学金の手続きの際は孤児院長を保護者の代理として頼んだ。
もちろん、両親にこっそりと代理の証明書も作ってくれた。
どれもこれも、玲の思惑通りに動いてくれた。
神様にとって彼女を絶望に落としたかったのだろうが彼女の方が知恵は上だ。
それからも、夏休みに至っては両親を罪の元に晒した。
それで提出した証拠はちゃんと証拠として働いてくれた。
そうしたら両親は“保険詐欺未遂”として処理され無事刑務所に送られた。
最後、二人は娘に向かって情状酌量を求めていたけど、幼い頃から抱いてきた憎悪が何一つ許してくれなかった。
無言で返された二人はもう何をする術もないと悟り、踞るように膝から崩れ落ちた。
この様子を全部見て元玲だったミレーネは誇らしく感じていた。
「あの時の院長には頭が上がらなかったっけ」
高校生のみでは両親を訴えることは出来ない。
それで代理の告訴者として院長に出て貰ったっけと思いながら見つめているとまた、別の映像が映し出されると思いきや、ジジジとノイズが走って今度は何も映らなくなった。
それはこれ以上は全部記憶に残っていると意識的に判断されたのだろう。
それで、夢も途中から変わった。
それは最初に神様と出会ったあの場所にそっくりになった。
そしてそこにいたのもあの時の神様だった。
「順調に事が進んでるそうだね」と言うと彼は背を向けている状態で優雅に白の装束をはためかせていた。
「あの時は見えていなかったけど結構格好いい姿をしているね」と客観的な感想を述べると彼は彼女の雰囲気に鼻で笑っていた。
「相変わらずだね」
そう言ってからゆっくりと振り返りながらその優しい表情を浮かべていた。
そして、彼女がやって来たことによる歓迎の魔法を振るった。
すると、彼女の前白いガーデニングテーブルと椅子を出してさらに空中からは綺麗な模様が入ったティーポットと可愛らしい花と蔓の模様が入ったティーカップを出した。
そしてそれをミレーネの席の所と神様の所にそれぞれカップが置かれた。
「一緒にお茶会なんて如何かな?」と言いながら浮いているティーポットを取っ手の方を掴んで誘うような仕草でそれを見せた。
「神様とお茶会が出来るなんて大変光栄なことでございますね」と立派にお嬢様を勤めてることを示した。
すると、自分の声に驚いた。
現実の世界では赤子の姿だったが、今は前世の人間の姿になっていた。
服装は今いる世界にあったドレスを身に付けていた。
「ここでは君の想像通りの姿になるからね」
ミレイナはこの世界が自分が見ている夢と同じ能力だと認識し、今度は前世ではなく成人したミレイナの姿として変化させた。
その行いに神様はほおと感嘆の息を漏らした。
「新たな世界で少し成長したのかな」
「私の
「君が生きた能力は今を活かしてるみたいだね」とこれまで生きた日々をそう簡単に纏められたけど彼女にとってそう言う言動は気にしていない。
「あの世界について…少し教えて欲しい」
「“少し”とは?」とテーマ的なものを彼女の口から出そうと食い下がってみたがミレイナは自分が感じた違和感を口にした。
「それは、本来ヒロインが辿るべきだったレールみたいな物なんだ。そのレールにするために態々干渉してきたようだね…」
「その口振りからして何か知ってるみたいですね。何か別の何かが関わってるの?」
そう聞いて真っ先に思い浮かんだのは自分思うように動かしていた神様の存在を思い出した。
「君が考えていることは正しくその通りだ。私の部下の一人がやっているがそれが誰かなんて分からない申し訳ない…」
彼女の理由を察していてそれで納得の出来る言葉を言ってみたけれどそれで、どういう反応を示すか気になった。
「やっぱり、でも貴方でも管理しきれないこともあるのね。まるで人間みたいね」と言って小さくクスッと笑った。
その笑顔に神様は何かに安心したように微笑みを浮かべた。
「この機会に私の自己紹介をしよう。私はあの世界の管理主ムエディという」
「ムエディ…それが神様の名前…」
人間である彼女に向けて神様の名、真名を差し出すのは相当な覚悟がいるはずだ。
「そこまで信用してもらえるとは…」
「君をここに連れてきた張本人だからね…絶大な信頼を得るための大事なことだから必要経費みたいなもの」
(そこまで…本気なんだ…)と彼の働きかけにミレイナは決意の眼差しを向けた。
それでムエディは一口紅茶を飲んでからこれからのことを聞き出した。
「何か他に必要な物はあるかい?」と聞いたら彼女も紅茶をミレイナも同じように紅茶を飲みながら「神様を捕える何かが欲しい」と冗談にも等しい言葉を言ってみたら彼はそれを魔に受けて何か真剣な表情で悩む表情を見せていた。
「人間が神様を捕まえるか…中々面白いことを言うね」
そう言ってから彼は何かの呪文を言ってから右手の人差し指で不思議な模様を描いた。
そして「利き手を出してごらん」と言った。
それでミレイナは言われるがままに右手を出した。
ムエディはその魔法の模様を彼女の掌にそれを当てた。
「これは特別な魔法で、我等はある条件下で君らの世界に顕現する時があるんだ。その時を狙って君の能力と先程渡したこの力でこう言うんだ“
そうすれば神様を捕えることが出来るのかと一瞬考えて思わず与えられた魔法をボソッと“捕縛”と呟いた。
その瞬間、目の前にいたムエディの体が急に金色の鎖に巻き付けられ机の上に置いていたティーカップが鎖の出てくる衝撃波でそこから落ちて床に落ちる直前で霧のように消えてしまった。
そして鎖は彼の体を拘束し、何もない白い床に転がった。
「あっ、ごめんなさい!」と自分のやってしまったことをすぐに謝り、それで慌てて駆け寄りどうやって解こうかと慌てふためくと彼は苦笑いを浮かべながら床に突っ伏した顔を無理矢理起こしそして彼女に解き方を教えた。
「判断が早い。さすが強い女性だね。解除する時は“
それで言われた通り彼女はそれを唱えた。
すると、彼に纏っていた鎖はサァっと砂のように消えてしまった。
「ハハ、一応この魔法は人間にも効くから使い方には気を付けてね」
そう言われて自分の力が益々強くなったと感じられたが、この魔法がある世界では普通にある物だ。
それが固定のスキルとして渡してくれたのだ。
今のミレイナが持ってるのはレベルの高い鑑定能力と心読み、そしてこの捕縛。
ますます元居た
探偵紛いをしていた時も同じことが言える。
すると、何処か遠くの方から「お嬢様」や「ミレイナ」と呼ぶ声がした。
それでもうすぐ起きる時間だと把握した。
「そろそろ起きる時間だ。余り遅くなると心配すると思うから」と言いながら、彼はゆっくりと起き上がりながら片膝を立てた座り方をした。
「まだ赤ちゃんだけど実行すること誓います」と決意表明をすると彼はにこりと笑って「いつも見守ってるからね。いってらっしゃい」と言った。
その瞬間、彼女の意識が大人の姿から赤子に戻り現実の世界へ帰っていった。
そして目が覚めたときには朝となり、自分の周りに先程のメイドと兄が自分を見つめていた。
「ミレイナ!おはよう!!」
…be continued
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