057-コントロールセンター防衛戦

とはいえ、予想外を突かれたのも事実だ。

P.O.Dを装備した艦載機サイズの船。

中に積める人間の数は有限とはいえ、エミドならいくらでも用意できるだろう。


『全機突撃!』


ラエリスがケルビスの指示によって滑り出し、魚群のように左右に分かれてエミド艦隊に突撃する。

エミド艦載機がそれに応戦するが、ラエリスはP.O.Dによる攻撃をものともせずに突貫、艦載機を粉砕して突き進む。

第二世代型は武装を搭載しているため、セントリータレットをばら撒きながら飛翔し、前面に二門だけ搭載されている砲台「クーゲル」を連射して、エミド艦を沈めていく。


『ぬう...木っ端ですら戦略兵器並には強いというのか』


グンドは唸る。

そして、命じる。


『破魔の風を使用せよ!』


と。

直後、エミド艦載機の周囲に発生した力場が、エネルギー残留物を巻き上げてラエリスに打撃を加える。

螺旋を描いて到達した殴打は、ラエリスのシールドにへこみを作る。

そこに三隻のエミド艦載機がP.O.Dを収束させ、シールドを貫いて装甲に攻撃を加える。

しかし、彼らが捕まえたのは第二世代である。

ケルビスが下した無慈悲な決断により、そのラエリスは内側から自爆する。

自爆によって内部の重力場に異常が発生し、発生した歪みはエミド艦載機三隻を巻き込んで唐突に消滅した。

戦場の彼方此方で、その光景と全く同じ光景が繰り広げられる。

そして、第二世代型の犠牲を乗り越えて到達した第一世代ラエリスによって、エミド艦隊の前衛にラムアタックがかけられる。


『被害拡大、32%』

『ハエどもを下がらせよ!』


グンドの命令で、エミド艦載機が敵陣へと戻る。

だがそれは、この戦場においては愚行とも言えるものだった。


『ニューエンド、アルカンシエル一斉射!』


味方を顧みず戦うのはエミドの特徴でもあるが、それはVe‘zにも同じことが言える。

メインコンピュータからの意識複製体でしかないAI達にとって、自らの死とはreloadに過ぎない。

ラエリスを巻き込む形で放たれた一撃は、慌てて防御フィールドを展開した本隊を除く、全ての敵......エミド前衛、エミド艦載機...その全てを消滅させた。


『バカな、味方を平然と...』


エミドとは、結局のところその本質は人間である。

死を厭い、失うことを恐れる。

だがVe’zの思考とは、似て非なるモノ。

味方など、また作った機体にインストールすれば製造できる。

資源など、半永久的に採掘できる。

損失よりも、主人の命令に応えられない事こそが、彼らの存在意義に反する恐るべき行為なのだ。


『化け物どもめ...』


グンドは呟く。

ポッドの中は液体酸素で満たされているというのに、その肌からは冷や汗が滲み出るようだった。


『第二次攻撃隊を出撃させよ、この戦場を制するのは我らなのだ』


だが、グンドもまたエミド人だ。

すぐに思考を切り替え、艦載機の第二陣を出撃させるのであった。

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