ここは妖怪学校。由緒正しい学園。

　通っている生徒達は当然妖怪。

　もしくはその末裔で、妖怪の血が薄い者もいる。割合としては末裔が圧倒的に多いけれど、生粋の人間もいるにはいる……が、数は少ない。いたとしても親しい友人なんかに妖怪が居る場合などの身近な存在が妖怪だという者も多く居り、妖怪関係者として入学しているのだ。

　そんな学園では妖怪の血が濃いほど上の立場になる傾向がある。

　例えば一部の人は知っている、王道学園。

　それでいう生徒会や風紀といった人の上に立ち、集団をまとめあげる役割になることがほとんどだ。

　学園の外では妖怪の血を引く者はお世辞にも良いとは言えない扱いを受けることも多く、その要因でこの学園に来た者だっている。

　勿論そんな事も無い場所もあるが、全体的に見れば数は少ない。

　しかしこの学園は妖怪至上主義、とまではいかずとも妖怪の血を引く者達がのびのびと過ごせる場所である。

　しかしながら外に比べて、という注釈が付く。

　妖怪学校という特殊な環境に加えてここは男子校だ。

　正確には学園の敷地内に他校舎もあって女子校もあるのだが、そこまで離すかと言うほどに距離が離れているため男子校で差し支えない。関わりもほぼほぼ無い。加えて寮暮らしのコンボで閉鎖的空間の出来上がり。むさ苦しい空間の完成だ。

　だが他の学校に行くよりかは天国と地獄ほど違うため、わざわざ外の学校へ行く妖怪はほぼいない。当然オレもこの学園へと入った。家庭の事情もあるにはあるが、自分で決めたこと。

　この学園の内情を知るまで、なんて妖怪に優しい学園なんだと思っていたが、現実は残酷だった。

　ここでは恋愛が蔓延っていた。

　しかも男女関係無く、だ。

　最近では同性愛も普通になったことは知っているが、普通ここまで偏るか？

　オレはその事実を知ったとき戦慄した。

　恋愛事に少しばかり苦手意識のある自分では、こんなにもあからさまに恋愛恋愛されると身が引ける。見守るのは嫌いじゃないのだが……オレには刺激が強すぎたな、とは友人談。友人にはうるさいと返しておいた。

――しかし、気づくのが遅かった。

　気がつけば、その時には血筋が血筋な為オレはいつの間にか上に担ぎ上げられ生徒会という役職にいつの間にか就いていた。

　仕事大変。

　ある時影で自分がワンコと呼ばれているのを聞いた事があった。

　妙に気になって耳をそばだてれば都合よくペラペラと話しているのが聞こえた。

　曰わく、この学園を王道学園やら非王道学園と言っていた。

　そんな物語じゃないんだから……と、その単語で調べてみれば小説や漫画が出てきたためなんとなしに読んでみれば何となくだが状況が分かった気がした。

　つまりは貞操の危機、と。雪女の末裔だなんだで顔が整っていること自体は自覚している。というか家族がみんな似た顔である。

　しかしワンコとはこれいかに。

　血筋的にもオレの顔は冷たい印象を与える無表情だし、違くないか？　温かみとは程遠い気がする。家系、雪女だし。ワンコは温かい印象だろう。

　うーむ、確かにオレは周りの人間（妖怪含む）とはよそよそしく、関わるのは老若男女関係なく苦手だ。目を合わせるのも苦手だし、前髪は自然と長くなって目を覆うくらいになっている。けれどもよく見れば、目は外からも見えるというあまり意味を成していない前髪。

　いや役立たずな前髪の話なんかどうでもいい。

　ポケットに旧携帯を収め、書類を捲る。

　今は生徒会の仕事の最中だ。いい加減仕事に取りかからなければ副会長に怒られる。

　あの人雪女の末裔じゃないのに怒ると背後に吹雪が見えるんだ……オレは怒られたことは無いけど、庶務の二人と会計が怒られているのを見たことがある。

　あれは怖い。

　今日もお仕事頑張らねば、と思った。