第20話

 無事に借りてこられた本は、アーカイブから呼び出しで読むことが出来た。

 枠を開いて『アーカイブ』を選択すると、その中に借りてきた本が6冊並んでいる。あとは読みたい本を選ぶだけ……枠の上の方には『アーカイブ』の中を検索出来る小さい枠があったりする。本当に電子書籍のメニューみたいだ。


「えっと、『創世神話の本』と『子供のための文字学習帳』と『国語辞典』と『アヴァロン国案内図』、『アヴァロン国内施設案内』、それから『世界地図帳』を借りてきました」

「良く出来ました! 全部ちゃんと借りてこられたね。ブックマーカーはどうだった? ツムギのブックマーカーはどんな形? 僕のはね、トカゲなんだよ。レイは鳥なんだ」


 ブックマーカーのタイプ? は、どうやら人によって違うみたいだ。どういう基準なんだろう?


「えと、シオリさんは亀さんでした」

「シオリさん?」

「あ、その、ブックマーカーさん?」

「へぇ~、しかし、亀かぁ。珍しいね」

「そう、なんです?」

「うん。一番多いのは鳥で、次が犬かな。リスも多いし、猫って人も割といる。僕のトカゲも珍しいタイプだね。亀は初めて聞いたよ。やっぱり変に説明せずに行ってもらって正解だったね!」

「正解じゃない、です……! 説明、欲しかったです……!」

「でも、びっくりしたし、わくわくしなかった? 知ってて行くより知らなくて行く方が、あそこは楽しいと思うんだよ」


 確かに楽しかったけども……!

 なお、図書庫の中とこちらでは時間の流れが違う件については、改めて注意と説明をしてもらった。

 あちらの時間は、こちらの時間の1/10の速さになるのだそうだ。

 つまり、あちらで1時間過ごしても、こちらでは6分くらいしか経ってない計算になる。その代わり、向こうの空間では1時間で魔力を60くらい消費してしまうんだとか。1分当たり1だ。普通の魔力の人だと、1時間で半分以下になって体調を崩すレベルらしい。その辺はブックマーカーが管理してくれて、危険域に行く前に戻るように警告してくれるんだそうだ。

 だからこそ滞在時間を減らす為にも、短い滞在時間中に必要な情報に行き着く為にも、ブックマーカーによる検索が必要なのだ。割と高額でびっくりしたけど。

 私がさっきあちらにいた時間は30分ほど。こちら時間では3分ばかり。魔力が減った感覚はほぼなかったけど……それはまぁ……元値が高すぎるからだろうな……。


 レンタルした本は、選ぶと枠と同じ銀色の本になって飛び出した。うっすら半透明の本で、文字のところは少し暗い銀色だ。あちら同様、重さはない。

 このレンタルした本は、レンタルした本人しか見れないのだそうだ。他の人が見れるのは銀色の本の形だけ。それをもって、レンタル本を使ってる最中だってことが分かる。それ以上は分からない。

 回し読みしたりは出来ないようになっているから、読みたいなら自分で借りてくるしかないとのことだ。


「明日からはこの本を使ってまずは文字を覚えていこう」

「はい」

「文字の形についてはどう? 覚えられそう?」

「えと、……はい、たぶん、だいじょぶです」


 文字は大別して、基本文字と拡張文字があった。

 基本文字は全部で50。母音が7つ、子音も7つ。それらが組み合わさって1つの文字になる。それに発音しない文字が1文字入って全部で50文字。この基本文字は表音文字。

 拡張文字は、基本文字の単語の頭に付く。これは発音しない文字。文字自体に意味があって、個数が多い……数百……それ以上……? お、多いな……!?

 同じ単語でもこの語頭につく拡張文字の違いで違う言葉になるから、結構ややこしい感じがした。

 まずは、基本文字からかな。


 ……あれ? でも、なんだろう……文字一覧表を眺めてたら、なんだか……読める、ような?


「ツムギ、ひょっとして、文字読めてる?」

「レイさん……あの、全部じゃないんですけど、多分、結構読めて、ます」

「え? 覚えたの? もう? 早くない?」


 そう。早い。私にしては、信じられないくらい、早い。

 頭の中に知識が吸い付いてくるみたい? 心なしか、なんだか懐かしいような気も……?


 なんとなくだけれど、基本文字はもう覚えてしまった。見ればどれがどれだか分かる……文字自体が記号と記号の組み合わせになっているから、覚えなくちゃいけないのは母音子音の合計14つとどちらでもない1つだけ……と考えれば、それはまぁ、覚えられてもおかしくないのかも?

 いや、それにしたって早いよ。


「この拡張文字も、組み合わせになってたり、してます……?」

「そう。良く分かったね。拡張文字は5つの要素の組み合わせになっているんだ。上下左右中にそれぞれ要素が入ってる。中には属性要素が入ってこれが10種。上下が中央の属性要素以外の属性要素、左右がその多寡を示していて、それらを読み解くとその文字が有する意味が導き出されるんだよ」


 ど、独特……!? 漢字みたいな……もの、だろうか?

 ……ルカさん曰く、「まぁよく使うものは精々100か200か程度だから、最初は丸暗記しちゃうのが楽だよ。うん」とのことだった。


 数字はもう覚えた。十進法になっているから分かりやすかった。

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