お願い、女神様

SHI

第1話

 仕事が終わると、疲れ切って寄り道もせずに帰る俺。帰っても、誰も待ってない真っ暗な部屋。

 今日も同じルーティンのはずだった……

 ん??

 鍵が開いてる。

 ドアを開けると、明かりが点いている。

「パンパカパーン、あなたは特別に選ばれました」

って、誰??

「女神様ーっ!!」

彼女はそう言い放った。

 んん??どう考えても、不審人物だろ!!

 だいたい、女神様がなんで俺の部屋に??ってか、どうやって入ったんだ。それこそ、女神の力を使って現れたのか??

「んーん。大家のおばちゃんに、妹ですって言って鍵を借りたの」

大家さん、明らかに不審人物じゃん……ちゃんと仕事してよ……

 で、自称女神様が、何のようですか??

「特別に一つ、願いを叶えて差し上げまーす」

って、本物の女神様のようなこと言うじゃん。

「でもね、願い事には制約があって、他人を不幸にするような願いは叶えられないの」

あっ、そうなんだ。まあ、そんなお願いしないけどね。じゃあ、俺を億万長者にして。

「ぶっぶー。ここでたくさんのお金を出しちゃうとね、全体のお金の価値が下がって、他の人がちょびっと不幸になっちゃうの。インフレってやつ??」

うわーっ、すごいドヤ顔されてる……それにしても、意外と難しいな。

 じゃあさ、じゃあさ、彼女が欲しい。

「それも、ぶっぶー。彼女になった人がかわいそうじゃん」

なんでだよ!!泣くぞ??

 なんか、色々制約がかかって、なかなかお願いが思いつかないや……

「あと10秒以内でお願いしまーす。チッチッチッ」

ええっ!!えっとー、えっとー。

「チッチッチッチッ」

ちょっと待って!!

「その願い、叶えましょう」

えっ??

 彼女がフリーズしてる。顔の前で手をブンブンやっても動かないや。

 ん??動かない??じゃあ、遠慮なく、胸をタッチ……パチーンッ。あっ、それはダメなんだ……

 彼女はパチパチっと瞬きをして、動き出した。

「はい、ちょっと経ちましたぁ。じゃあ、てなことで。残念無念、また来週ーっ」

そう言うと、彼女は部屋を飛び出して行った。

 一体、なんだったんだ……てか、また来週来るんかいっ!!

 なんて言いながら、また来週きてくれることを心の片隅で期待している自分がいた……


 って、翌日にくるんかいっ!!しかも、大家のおばちゃんと俺の部屋でティーパーティーしてるし!!


 恋には奥手の女神様、2つ目にした願いをゆっくり、じっくりと叶えるのです。


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