青葉は、幼馴染の宗介が突然行方をくらませた7年前から見始めた不思議な夢がある。いつも橋の前で目が覚めて、その先へ踏み出すことはいつもできなかった。
満員電車にもまれ、同じ毎日を繰り返す日々。そんな彼を誘ったのは、物語を待つという心に燻った情熱だったのかもしれない。気づけば夢で見る橋の前に立っていた彼は、言葉を話し二本足で歩くとある動物に案内され、とある旅館へと案内され、7年ぶりに宗介と再会する…
幻想的な描写で世界が紡がれ、不思議な温泉街が淡い灯りに沈んでいるような情景が浮かびます。水の音、湯気の感触…旅行で知らない温泉街にやってきたあのワクワク感が味わえました。それだけでも十分お勧めできる作品ではありますが、このお話の芯が、物語を愛する人々への尊敬と愛情になっているところがとても素晴らしかったです。
未完の作品とともにこの街に消えてしまった宗介。完成しない物語が無数にある現実世界で、それを待ち続ける誰かがいる。そんな温かなメッセージがじんわりと伝わってきました。
橋は読み手と書き手を繋ぐものであり、それがいつか消えてしまったとしても、深く心に残るものこそが、物語の真髄であると。改めて物語を紡ぎ、受け取っていくことの愛しさを知ることができました。
だれでも書き手や読み手にもなれる今の時代にこそ、強く心に響く作品です。