紅く散った春の果てで、私は生きる

春は、いつも残酷だ。

居場所を失った少女・美春は、身体を売って日々をしのぎながら、誰にも癒されない喪失の中を歩いていた。
母とは呼びたくない母。愛とは呼べない愛。
希望のように見えて、ただ毒を孕んだだけの季節が、彼女の頬を撫でて過ぎていく。

逃げ場のない過去、叫び出したくなるような現在、
それでも、ただ死ねない理由がある。
誰にも知られたくなかった弱さも、
ほんの一瞬のぬくもりも、
すべてが爪痕となって胸に残る。

春という名の幻想を、それでも求めてしまうのはなぜだろう。

これは、たったひとつの『生』にしがみつく少女が、
幾度となく傷つきながら、それでも『狂い咲こう』とする、
魂の物語。

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