第22話 どんレボリューション始動!

 衣食住の住は充実した!!


 ようやく私の野望! どんレボリューションを行う時が来た!!


 私はテンゼンとハンニャ、その弟子たち(いつの間にか十人ぐらいいる)を前にして熱く語っていた。


「このように、この丼という器の中では小さいけれども大きな世界が広がってるんです!!」


 私が締めの言葉を言うと清聴してくれてた面々がスタンディングオベーションで拍手してくれた。中には泣いてる者もいる。


 いや、泣くような感動的な話はしてない筈だが……


 それでもみんながこうして賛同してくれるのは嬉しいものだ。


「リョージ様、我々はやりますよ!! この領地に丼という世界を広めて行きます!!」


「リョージ様、コレだけではないのですよね!?」


 今回、私がみんなに用意した丼は牛丼、カツ丼、親子丼の三種だが、もちろんまだまだ丼はある!!


「一度に全てを覚えるのは難しいですし、みんなが利益を出るようにしたいので、皆さんには特定の丼に特化してもらいたいと思ってます。例えば貴方は牛丼、貴方はカツ丼、貴方は親子丼という感じで、そこに行けば最高の牛丼やカツ丼が食べられるという形にしたいと思っているんです!!」


「ウォーッ! 益々やる気が出てきました!!」

「一つだけなら完璧に覚えられるっ!!」


 みんなのやる気が凄い。これは私も更に気合を入れて取り掛からないと。


「さっそくですが、今から丼を出します。皆さんには小分けにして食べていただきます。何種類もありますので、一つの丼を平らげてしまうと全ての味を知るのに何日もかかってしまうからです」


 私はそう言うと収納から定番の牛丼から出し始めた。カツ丼、親子丼、木の葉丼、他人丼(豚肉)、他人丼(猪肉)、他人丼(牛肉)、親戚丼(鴨肉)、目玉焼丼、天丼、海鮮丼、鰻丼(穴子丼)、カレー丼、天津飯、麻婆丼…… うん、コレぐらいにしておこう。

 まだまだ収納には丼ものが入っているが、これ以上だしても試食が難しい量になるだろう。


 目の前に出された丼にみんなの目が釘付けになっている。

 私は小皿を出してテンゼンとハンニャに試食用に取り分けを頼んだ。


 テンゼンとハンニャよ…… 自分たちの分だけ量が少し多いのはいかがなものか……


 私は二人を連れて脇により注意した。


「二人とも、食べたい気持ちは分かるけど後日、ちゃんと食べさせてあげるから今は二人のお弟子さんたちを優先してあげてよ」


「ホントですかっ!? リョージ様! ならばそうします!」


「約束ですからね、リョージ様!」


 全く…… この二人は。私は呆れながらもちゃんと約束をした。そして試食が始まり、みんなが口々にどれも美味い! と言っている。


 ちなみに試食する為にこの厨房には母上に頼んで結界を張って貰っている。匂いも漏れないようにして、また外からは扉が開かないようにしてもらった。

 母上には領地の発展の為の極秘会議だと伝えたのだ。会議の内容が万が一にも外部に漏れると領地の発展に支障をきたすと伝えたら母上が全力で結界を張ってくれた。とても感謝している。


 そんな中、みんながそれぞれ自分で作りたい、又は作れるだろうという丼が決まったようだ。

 それぞれ第3候補まで書いて提出してもらう。


 それは見事なものだった。


「みんな、俺もハンニャもみんなのような弟子を持てた事を嬉しく思う……」


 テンゼンが半ば涙ぐみながらもそう言う。


「みんな、有難う……」


 ハンニャも弟子たちに向かって礼を言う。


 何故ならば第1候補で被りが無かったからだ。


 港町クーレで食堂を営む二人はそれぞれ海鮮丼と鰻丼(穴子丼)を選んでいる。

 ちなみにだが蒲焼きは無いが白焼きは既にあったので、鰻や穴子を捌くのは大丈夫だ。


 そして、領土がひろがり領民が増えそうなので新たにクーレで食堂を開く予定の二人は天津飯と天丼だ。


 領都カラムの食堂経営者は牛丼。そしてカラムの宿屋兼食堂を営む者二人はカツ丼と親子丼だ。

 また、カラムの児童保護施設で施設にいる十歳以上の児童たちと共に屋台を始める者はカレー丼を選んだ。良い選択だと思う。


 他の三人の者たちは共同で屋台を引いて、午前中はカラム、午後からクーレへと移動しながは販売するつもりのようで、木の葉丼、親戚丼、麻婆丼の三つを選んだ。

 屋台と言っても魔馬にひいて貰うように大きな物を作る予定らしい。

 その為の木材を私が提供することを決めて伝えたら泣いて喜んでくれた。

 また、魔馬も私が収納から出す事にした。それについては子爵家でテイム済の魔馬を貸し出しすると伝えた。

 勿論だが児童保護施設の者にも同様にすると伝え、他の店舗持ちの者たちへも食器(丼)や調理器具を提供することにした。


 先ずはみんなが練習を重ねて味を向上させる事を決めて、1週間ごとに集まり成果を披露して貰う事になった。


「それじゃあ練習用の材料を渡します。足りなくなったらテンゼンやハンニャに言ってくださいね。直ぐに補充しますから。みなさん、1週間後にまたここに集合してください、それでは本日の会議はここまでとします。解散!!」


 私の言葉に料理人たちはそれぞれ相談をしながら帰っていく。みんなの顔がとても明るいのは嬉しいことだ。


「フッフッフ、リョージ様、うちの領地は変わりますね!!」


「本当に! 他所の領地には無い魅力的な丼の数々。完成したなら竜王様にお願いして陸路で純粋に旅をされてる方を領地にお招きして、口コミで広げて貰いましょう!」


 私も二人の意見に賛成だ。だが、先ずは目先の問題を片付けないといけない……


「父上、そんなところから覗いてないで入って来てください。母上も……」


 そう、父上と天使な妹を抱っこした母上が料理人たちが出てくるのを確認して、扉の隙間からこちらを覗いていたのだ。


「リョージ、何やらいい匂いが充満しているのでついな……」


「リョーちゃんズルいわ。私も食べたかったのに……」


 食べさせないとは言ってませんよ、母上。私は母上から天使な妹を預かる前に、父上の前にカツ丼を、母上の前に親子丼を出して差し上げた。

 そして、妹を抱っこする。


 天使だ。妹は私を見てニッコリと微笑んでくれた。私も嬉しくて妹に向かって微笑む。


 その様子をテンゼンはニコニコと見て、ハンニャは何故か鼻を押さえて悶えている。何かあっただろうか?


「ハァ〜、尊いわ……」


 ハンニャが何か呟いているのが聞こえたが、父上の叫びがそれをかき消した。


「ぬおーっ!? 何だ、コレは! けしからん! 牛丼に勝るとも劣らない味じゃないかっ!!!」


 次に母上は幸せそうに微笑みながら、


「リョーちゃん、この親子丼って優しくてとても美味しいのね。何だか心がホッコリするお味だわ」


 と言ってくれた。


 そこで私は先ほどの会議の結果を父上と母上に報告したのだった。

 

 名付けて【どんレボリューション】!! 合言葉は【ハァ〜、ビバ、どんどん】である。


 父上も母上も次回の1週間後に開かれる成果報告会議に出席すると言ってきた。そして、その為にはその丼の味を知っておかなければならないと力説してくる。なので、明日以降の昼食と夕食は私が収納から日替わりで丼を出す事を義務付けられた……


 まあ、そうなりますよね…… 私は頷いて了承するしかなかった。


 とにかく、どんレボリューションは始動した。次に着手するのはコンクリート部隊の活躍だ!!


 私は新たに増えた領土に公共の建物を建てる事を父上と母上に進言して認められている。

 なので、いよいよ鉄筋コンクリートの建屋を私が収納から出すのではなく、この世界の人の手によって作りだすのだ!!


 ドワーフ、オーガ、ゴブリンの力を借りるつもりだ。彼らに手助けしてもらい先ずは3階建てのビルを領都カラムに建てる。


 そこにケンゴに選んでもらった人材を集めて今は父上がセバスの手を借りて行っている行政を仕分けしていこうと考えているのだ。


 決定権が父上にあるのは変わらないが、全てを父上が取り仕切るのではなく、ある程度の権限を与えた者に仕事を振り分けるのだ。

 これは領民が増えるならば行っておかねば父上やセバスの負担が大きくなりすぎてしまうから、必要な事だと説明をしてある。


 セバスも賛成してくれたので、取り敢えずは1週間で建屋の骨組みを完成させる事を目処に、明日から取り掛かる事にした。


 ただ、太い鉄骨などは作るのに時間がかかるので、柱については木でまかなう予定だ。木には防腐処理を施して間の壁を鉄筋で繋いでコンクリートで固める方式で今回は行う。

 

 さあ、忙しいが頑張って行こう!!

 

 私は天使な妹を見てやる気を溢れさせたのだった。



 

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