桐乃さん視点②

「......」


私しかいない自室で体を起こす。


「...あれ?」


さっきまでわたしのベッドの上にいた清人君の姿がない。


本当だったらなんでわたしは気を失っていたとか、もっと記憶をたどる必要があるけど、今は清人君が目の前から消えてしまったという事実だけがわたしのなかの全てを侵す。


「清人、君?」


自室を出て、家中を調べる。


リビング、キッチン、トイレ、脱衣所、風呂場、両親の部屋、ロフト、地下室。


いない。


いない、いない、いない、いない、いない、いないいないいないいないイナイイナイイナイイナイイナイイナイ


どれだけ探しても、家の中に清人君の姿はなかった。


「どこ...?どこにいるの清人君?」


当然飛びかけに反応する者はいない。


「そうだ、庭...」


まだ庭を探していないことに気づき、リビングの窓から庭に出ようとすると


「鍵が開いてる」


ということは清人君は庭に出た...?


わたしはすぐに庭に飛び出し、まずは目で清人君がいないかを探す。


いくら見渡してもいないと分かると、今度は直接足を庭の隅々まで運ぶ。


「き、清人君。もし、隠れているとかだったら出てきてほしいな。今は...あまりかくれんぼとかしたくないから...」


もう清人君はこの家にいないという事実を心のどこかでは分かっているのに、まだ微かに残る希望を胸に抱き無我夢中で探す。


すると、庭の端にあるフェンスになにか足跡のようなものが残っていることに気づく。


「この足跡...清人君のだ」


間違いない、この幅が小さな跡は清人君がいつも履いている靴だ。


おそらくこのフェンスをよじ登っているときに、足をフェンスにくっつけてしまったのだろう。


「ふふ...可愛いい清人君。かくれんぼなのに、ついつい痕跡を残しちゃって」


そう、これはかくれんぼ。

わたしと清人君のかくれんぼ。


規模は、この街全体。


「ああ...でも」


さっき、清人君を見つけるために家中をあさっていたときに、だんだんとわたしが気絶するに至った経緯を思い出してきた。


「また、あの子だね」


そう、確かわたしが清人君のことをたくさん鳴かせてあげようとしたときに、家のインターホンが鳴ったのだ。


宅急便かなと思ったけど、いざ玄関を開けてみたら凛華ちゃんが門の前に立っていた。


当然開けてやるつもりはなかったけど、凛華ちゃんわたしが顔を見せた途端に、門をよじ登って、中に入ってきた。


そこでなぜかわたしの中に、凛華ちゃんにも清人君がわたしに滅茶苦茶にされるところを見せてあげようという気持ちが出てきてしまった。


凛華ちゃんはわたしのことなど眼中にないように、ずかずかと家の中に入ってきた。


わたしはそんな凛華ちゃんに後ろから、とっとと帰れみたいことを言ったけど、全然本気で言ったわけじゃなかった。


そしてついに凛華ちゃんがわたしの部屋に入り、ベッドの上に手錠で拘束されていて裸状態の清人君の姿を見つける。


そこで心の中がすべて空っぽになったかのように膝から崩れると思っていたのに、わたしが部屋の中に入ってきたときには身動きが取れない清人君にキスをしていた。


わたしはその光景を見て衝動が抑えられなくなり、凛華ちゃんに襲い掛かろうとした。


そしてラハンカチを鼻に押し当てられて...


気づいたら自室に一人で倒れていたというわけ。


「......」


今までは我慢してきた。


何度も濡髪姉妹にわたしと清人君の関係を妨害されてきたけど、それでも耐えてきた。


ここまでわたしは我慢したというのに、相手は全く容赦なくわたしの邪魔をする。


「なら、もういいよね」


わたしはキッチンに行き、切れ味のいい包丁を手に取る。


「......」


包丁を見ながら、頭の中でシミュレーションする。


わたしがこの包丁を使って、凛華ちゃんを二度と妨害できないようにする光景を。


「ううん、やっぱりこういうのはわたしには似合わないや」


だって...包丁を使えばすぐに終わっちゃうでしょ?


凛華ちゃんには、もう少し恐怖を味わってから消えてもらわないと。


わたしは、包丁を元あった場所に戻し、もう一度庭に出て、清人君の足跡が付いたフェンスをよじ登る。


「待っててね清人君。このかくれんぼが長引かないように、すぐに見つけてあげるから」


さぁ、かくれんぼ開始だよ。


清人君、そして、お邪魔虫の凛華ちゃん。

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