隠れ家である宿屋

「えーっと、凛華さん?ここは...」


俺は凛華に紹介されたとある"宿屋"の一室に入り、ここがどんな宿屋なのかを訪ねる。


「見ての通りラブホテルだが?」


凛華は顔色一つ変えることなく堂々と答える。


まぁクール系なんだから、こういうところに来ても顔色一つ変えないのはいいことなんだけどさぁ。

まさかあの凛華が率先して俺をラブホに連れてくるとは思わなかった。


「仕方ないだろう。普通のビジネスホテルだったら、制服姿の私が入ってきた時点でいろいろと事情を訊かれる。こういうグレーゾーンのような施設しか今は行くあてがないんだ」


確かにラブホは今や中学生同士でも入れると聞くしな。


「それに、お前は前に一回来ただろう?絹井桐乃と一緒に」


一瞬だけ凛華の目つきが変わった。


なるほど。


俺が凛華よりも先に桐乃さんとラブホに入ったことにまだ少なからずやきもち...

いや、もうここまでくるとやきもちなんて可愛い言葉じゃ表現しきれないな。


「まぁいい、今日は一日ここに泊まるぞ」


「え、一泊過ごすの?」


「当たり前だろう。おそらく奴は一回私たちが家に戻っていないことを確認しても、それで帰るのではなく少なくとも今日一日は張り込みを続けるはずだからな。

大丈夫だ。あとで風珠葉にも今日は友達の家に泊まっていけとメッセージを送るから」


一日ラブホで過ごすというのは...そういうコトを期待してもいいのか?//


だって、ラブホに一晩泊るとしたらもうそういうコトをするしかないよな?


「...何をニヤニヤしている?」


「い、いや、何でもありません」


そうだった。

まだ凛華は俺がマゾだということには懐疑的だったんだ。


凛華みたいな系統には、あからさまにマゾであることをアピールするのはよした方がいいだろう。


「何か頼むか?どうやらここはパネルで注文すれば、部屋まで食事を持ってきてくれるそうだが...」


昨日から痛みで全く食欲などなかったが、せっかくこんなちょっと高そうなラブホテルに来たのだから、何か頼んでおいた方がいいだろう。


俺はパネルでハンバーグ弁当を選択し、注文する。


そして注文してから十分もしないうちに部屋に届いた。


ちなみに凛華は何やら魚の定食を頼んだようだ。


二人で部屋のテーブルで向かい合いながら食べる。


「「......」」


やはりラブホでも黙食ルールは適用されるのか、まったく話しかけようとしない。


凛華はもう食べ終わったようだが、テーブルから離れようとしない。


俺が食べ終わっているのを待ってる...?


妙な焦りを感じ、俺は一口一口の量を多くし、いつもより比較的早く食べ終わった。


「おい」


俺が食べ終わったのと同時に、凛華が口を開く。


このタイミング...


ま、まさか凛華は性欲が高まってきているのか?

もうそれが自分でも抑えられないから、"今から激しくお前を浄化する"

なんてイケメン顔で言われちゃうんじゃないか?


そしたらもう俺その言葉だけで完全に凛華のメスに堕ちてしまうよ//


「お前はこういう部屋が好きなのか...?」


はぁ~ん//

言われちゃった...ん?


「だから、お前はこういう部屋が好きなのかと訊いてるんだ」


え、どういうこと?


「ま、まぁ今の自室よりは気にっているけど...」


「そうか...」


今のはどういう意図のある質問?


もしかして近々家をリフォームするとか?


「お前が高校を卒業するタイミングで、私と二人で同棲するだろう?だから、お前はどんな部屋を気に入っているのか、物件探しの参考になると思ってだな」


!?


そうやん、凛華の中ではもう高校卒業後に二人で同棲することが決まってたんだった。


「安心しろ、今のようにしっかりとお前の意見を尊重して物件探しをするから」


そ、それはありがたいなぁ...


...まぁ、でも冗談抜きにそういう展開もあるかもしれないから、結構物件探しは慎重に考えた方がよさそうだな。


まず事故物件は論外。


ネットで聞く事故物件に関する怖い話は、ほぼすべてが創作であると分かっているが、そういうのはあんましクール系ヤンデレには合っていない。


次に一軒家かマンションかだが...これはさすがに現実問題マンションじゃなきゃ無理な気がする。


一軒家じゃ土地代とかもかかるしな。l


え?なんで選択肢の中にアパートが入ってないんだよって?


いやいや、当然一緒に同棲する相手はヤンデレなのだから、常に俺の監禁場所は持っているはずだろう?


アパートじゃ狭すぎて俺の監禁場所を確保できないやん。


で、次にマンションの何階かだが...


これはできるだけ上の階の方がいいな。


それなら定期的に凛華をヤンデレとして強化させるためにわざと逃げ出したとき、いろいろとスリルを楽しめそうだから。


「夜まで暇だから、何か見るか」


凛華が部屋に設置されているモニターの下のケースに入っているDVDをあさる。


「ん?...なんだこれは」


「......」


まぁ当然、ラブホテルなんだから部屋の中にあるDVDはそういうのしかないだろう。

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