管理人の実力・1


 このケイギという男は、またリュドスと違って、どことなく冷たい雰囲気が漂っていた。


 ケイギは銀縁メガネをかけていて、その奥で光る、切れ長の糸目が特徴的であった。


 こちらの腹の中を全て見透すような怖さもある。


 彼は、淡々とした口調で話しを進めていく。


「こちらのA棟には60の部屋があります。3階までの30号室までが男性部屋、4階の31号室から6階の60号室までが女性部屋です。ちなみにですが同じような宿舎がE棟まであり…」


 雄大は周囲を見渡してみた。皆それぞれが不安そうな表情を浮かべている。

 

 車の中では威勢が良かったレイモンドも、おどおどしている。


 彼の気持ちはよく分かった。ケイギの静かな圧のせいだ。精神を全て持っていかれそうな重圧。


 それに皆が飲まれそうになっているのだが、リタだけは他の人間と違った。


 彼女は、腕組みをして堂々と立ちながら、ケイギの方を真っ直ぐに睨みつけていた。


(さすがだな、リタは……)


 リタの隣りのビンを見ると、様子が少しおかしい。ソワソワしているように見えた。


(どうしたんだろ…?)

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