最終話 これまでの幻想と、これからの現実

カーテンの隙間から入り込んだ日差しに、私は目を覚ました。しかし、布団からは出たくない。だって、寒いから


昨日のことは、あまり覚えてないけど、嫌なことに負けて、寒空の中、公園で鬱ってたんだっけ?


今は、冬休みの真っ只中。やっと、寒いなか登校する必要が無くなったのだ。この幸せを、私はこれから数日間だけとはいえ感じられるのだ。冬休みの最高


しかし、残念なことに人間には枷がある。食事という枷が…それを疎かにし始めたら、生活習慣が本格的に終わる


私は部屋の電気をつけて、仕方なく布団から出る。そして、パジャマを脱いで私服に着替えた


次に向かうは洗面台。パジャマをかごの中に放り込み、私は洗面台で顔を洗う…


「ん…?」


少し、自分の顔に違和感…というか、変化を感じた。しかし、目に見えての変化ではない


さらさらな黄緑色の髪。自分で言って恥ずかしいが、整っている顔つき…そして、ああ、それか


私は、鏡に映る自分の左目を、優しく撫でた。右目は「黄緑色の瞳」に。そして、左目は、強い意思のこもった「白色の瞳」のように見えたのだ


なぜか、この目を見ると勇気が湧いてきた。少し前まで、大きな何かに悩み潰されそうになっていた気がするが、それはもう感じない


「よし!」


私は顔を洗って、歯を磨き、リビングに向かう。リビングでは、お父さんが昨日のクイズ番組の録画を見ており、私も参戦することにした


「おはよう、お父さん」


「ああ。おはよう」


そう挨拶し、少し私の顔を見つめてきた。そして、お父さんは一言だけこぼして、テレビに向き直した…


「『成長』したな」


その言葉を聞いて、私に自然と笑みが生まれた。そっか、こういう唐突な成長もあるんだ


私もお父さんの隣に座って、クイズ番組に目を向ける。クイズの内容は…


「日本の都市伝説」…私の大好きなジャンルだ


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あれから2年。中学を卒業した私は、進学先の「夢咲高校」の入学式へと向かっていた


知らない生徒達の波に乗り、初めて着る制服で、校門に続く桜並木を進んでいく


この時期になると、いつも不思議な感覚に陥る。どうしてかは分からないが、桜を見ると、胸の奥から勇気が湧いてくる


この勇気は、私に「変わらずあるもの幻想」であり、私を「変えてくれたもの現実」でもある


昔の、幻想に依存していた私は、現実から頑なに目を背けていた。辛いものだと諦めていた


けど、ある日。私は変わることができた…現実を見ることができた。けど、幻想を捨てた訳ではない


むしろ、今までの私がおかしかっただけだ。「幻想」の対極である「現実」に目を向けなければ、それを比べることができない…本当の意味で「幻想」を見れないのだと


だから、私は現実をちゃんと見て、ちゃんと生きて、それでいて「幻想」にまた恋をしたいのだ



風が吹き、桜が枚散る…


『「新しい生活の始まりだね新しい幻想の始まりだね」』


私は、幻想を胸に、現実を歩き続けるよ…




[あとがき]

最後までお読みくださり、ありがとうございます


実は、もうちょっと日常パートを書いて長くする予定でしたが、圧倒的に時間が足りず。プロットが間に合わなくて、下書きに戻したりしてましたので、主要なメインパートだけを抜粋して完結までもってきました


カクヨム…というか、他のサイト含めて、初めて完結まで書いたので、ちょっとやりきった感はあるのですが…


ここだけの話、実は、双色唯一ちゃんには、まだ別作品でやってもらいたいことがあるので、どこかでまた会えるかもしれませんよ


それでは、最後にもう一度。『イマジナリーに恋をする』をお読みくださり、ありがとうございました


              by わっふる

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イマジナリーに恋をする ワッフルEX @WaffleEX

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