第6話  少年達は、楽しむ!

「アダチさんが露出の多い服を着ているからだろ」

「夏だもん。夏気分を味わいたいじゃない」

「まあ、僕も甚兵衛だけど」

「昔の人は、海やプールで泳げたらしいね」

「そうだね、広いところで泳いでみたいね」

「いつか、一緒に行こうね」

「うん、行こう」

「そうだ、カズナリ君、一反木綿って知ってる?」

「……知ってるけど」

「どんな妖怪?」

「ただの木綿。長いから、人の首や顔に巻き付いたりする……らしいよ」

「詳しいのね」

「一反木綿がどうかしたの?」

「街に現れたっていう噂なの」

「へえ、誰が言いふらしているんだろうね」

「そういえば、噂の元が誰なのかはわからないけど」

「きっと、ただの噂だよ」

「じゃあ、砂かけ婆は知ってる?」

「砂をかけるだけの和服の婆。たまに砂にしびれ薬を混ぜてくる……らしいよ」

「へえ、そうなんだ。カズナリ君って本当に詳しいのね」

「次は、子泣き爺?」

「よくわかったわね」

「なんとなく、そんな気がした」

「爺なんだけど、赤ちゃんに化けたりする。身体を石に出来る……らしいよ」

「へえ、見てみたいなぁ」

「やめといた方がいいよ」

「どうして?見たいじゃん」

「だって、妖怪だろ?見ない方がいいよ。僕は見たくない」

「私は見たい、っていうか、外へ出たい」

「外へ出たいの?」

「だって、このままだとお見合い結婚になるでしょう?」

「うん、うちの両親もお見合いだったらしい」

「うちもそうなの。でも、恋愛結婚したいでしょ?」

「うん、まあ……」

「優しい人がいいなぁ、子供は3人って決めてるの」

「今から人生設計してるんだ、スゴイね」

「女友達とも、よくこういう話題がでるんだよ」

「そうなの?」

「うん、やっぱり結婚にはドラマを期待しちゃうからね」

「僕達、恋愛結婚は出来ないのかな?」

「こんな風にオンライン通話から始まる恋愛結婚もあるらしいわよ」

「そうなの?」

「うん。でも、結婚となると、仮面を外さなきゃいけないよね」

「うん」

「人前で仮面を外したことが無いから、恥ずかしいなぁ」

「そうだね」

 カズナリとアダチは、長時間の通話をした。


 電話を切ると、ドアをノックされた。アーリーだった。


「カズナリ様、女子と通話なさっていたようですね」

「アーリーには関係無いだろ」

「これをどうぞ」

「何、これ?」

「エロ本です。厳選しました。この本で、健康的な性の目覚めを」

「……」



 困ったロボットだ。



「おい、あいつは何者だ?」

「……魔女だろう」


 ライの言葉にハクが答えた。


「何故、魔女だと言える?」

「だって、ほうきに乗って飛んでるから」

「何だと! 日本妖怪だけで手を焼いているのに、西洋妖怪まで来たのか?」

「どうも、そうみたいだな」

「やる! やってやるぞ!ハク、突撃だ」

「おう!」

「おい、待てよ!」


 カズナリの制止を振り切って突進するライとハク。ライが先手を取った。


「おらー!火球だぜ」


 ライが火球を放った。火球は、水のバリヤーで防がれた。


「おい、簡単に防がれているぜ」

「うるせえ、ハク。もう一度だ」


 魔女が、水の刃を放った。


「うわー!」

「ハク!避けろ」

「わかってる」


 ライを背負ったハクは、かろうじて水の刃を避けたが、バランスを崩して墜落した。が、なんとか怪我しないように不時着することが出来た。


「カズナリ!気を付けろよ」

「わかってるよ」

「カズナリ、大丈夫なのか?」

「いいから突っ込め」

「わかった」

「かまいたち!」


 疾風の刃が、魔女を襲った。風の刃は水の防壁を蹴散らした。だが、魔女に届くには至らなかった。


「ダメだ、防がれた。反撃されるぞ、シン、逃げろ!」

「わかった」


 水の刃が追いかけてきた。カズナリの風の防御でしのいだ。


「互角かな?」

「勝負がつかないじゃないか」

「ライと合流しよう」

「わかった」

「ライ、ダメだ、風の刃では勝てない」

「俺の火球でもダメだった。どうする?」

「ライ、カズナリ、魔女がこちらを狙っているぞ」

「伏せろ!」


 魔女が光の弾を放った。弾は地面で爆発した。


「なんだ?ビームか?」

「あんなの反則だろう」

「クソッ、心理戦だ」

「心理戦?」

「やーい、婆、お前のような醜い婆にやられるわけないだろう? 悔しかったら、若く美しくなってみろー!」


 ライの言葉を聞いて、光の弾が連発で放たれた。


「逆鱗に触れてしまったんじゃないか?」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る