第4話  初対面か? 再会か?

 僕は、街をウロウロしてみた。同じ中学校だったのだ、翔子の家は大体はわかる(逆に言えばハッキリとはわからない)。


 だが、自宅近辺をウロウロしても、バッタリ出会うことなんて無い。そんな偶然はそうそう無いらしい。あんまりウロウロしていると変質者と思われてしまう。僕はあてもなくウロウロするのはやめた。


 そこで、僕は記憶を辿った。翔子に関する数少ない情報だ。そして、思い出した。翔子はよく図書館で勉強していた。それが、いつからなのか? わからない。中学校に入ってからだったらお手上げだが、小学生の頃から図書館で勉強していたとしたら? 僕は図書館へ行った。


 月曜、火曜、水曜……いない! 僕は焦り始めた。だが、土曜日! 僕は遂に翔子を発見した。やっぱり翔子は図書館で勉強していたのだ。友人と一緒だ。知ってる。翔子の友人は千夏だ。


 だが、そこで思った。“どうやって声をかければいいのか?”だが、考えるのも面倒臭い。僕は、早く翔子と接近したいのだ。そこで思い出した。“短時間戻る腕時計のボタン”のことだ。なんだ、これがあれば心強いじゃないか。失敗しても、ちょっとだけ戻れば良いのだ。僕は翔子達に話しかけることにした。



「やあ、君達、どこの小学校? 僕はA小学校の5年生やけど」

「……」

「あれ? 何か気分を悪くした? 僕、君達と仲良くなりたいんだけど」

「……」

「勉強? 僕も一緒に勉強してええかな?」

「困ります。席はいくらでも空いてますので、他の所に行ってください」


 思いっきり拒絶された。僕は腕時計のボタンを少し押した。


「困ります。席はいくらでも空いてますので、他の所に行ってください」


 もう少しだけ長押しだ。


「ねえ、ねえ、ちょっと休憩しない? コーヒーでも飲みに行こうよ」

「行きません」


 ボタンを押す。


「すみません、隣に座ってもええかな?」

「いいですけど、他にも空いてる席はありますよ」

「うーん、1人で来てるから……1人はちょっと寂しくて」

「そうなん? どこの小学校?」

「A小学校、今、5年。崔って言うねん」

「あ、私達も5年、B小学校。塚地翔子」

「そっちの女の子は?」

「私? 吾妻千夏」

「この図書館には結構来てるから、よろしく」

「私達も毎週来てるねん、よろしく」

「で、隣、座ってもええかな?」

「うーん、ええよ」

「勉強、わからんところあったら教えるで」

「教えてくれるん?」

「うん、ええよ」

「ほな、この問題わかる?」

「うん、この問題は……」

「スゴイ! めっちゃわかりやすい」

「なんでも聞いてくれ」

「ほな、これは? ……」


「ちょっと休憩せえへん? コーヒーか紅茶でも飲もうや。奢るから」

「奢ってくれるの?」

「うん、さあ、千夏ちゃんも行こう」


「あれ、自動販売機はそこやで」

「喫茶店に行こうや」

「え! 喫茶店?」

「パフェでも食べてくれや」

「ええの? 高いやろ? 何か悪いわ」

「ええねん、ええねん、今日、お金なら持って来てるから」



 僕達は、喫茶店に入った。


「好きなもの頼んでええで」

「じゃあ、アイスティー」

「パフェ食べたらええやんか?」

「高いやんか?」

「ええから、ええから、何パフェ? チョコパフェ? バナナパフェ?」

「ほな、チョコパフェ」

「千夏ちゃんは?」

「ほな、バナナパフェ」

「よっしゃ、注文しよう」


「崔君は、コーヒーなん?」

「うん、男はパフェって感じとちゃうやろう?」

「ミルクも砂糖も入れへんの?」

「うん、コーヒーはブラックが1番美味い。飲んでみる?」

「ほな、ちょっとだけ……あ、苦い」

「その内、この苦さを美味しいと思うようになるねん」

「崔君って、大人やね。でも、なんでそんなにお金を持ってるの?」

「僕は、雑誌の懸賞に毎月応募してて、毎月1万か2万、手に入るねん」

「へー! スゴイなぁ。懸賞で稼げるんや」

「まあね。今度、僕の一コマ漫画が載ってる雑誌を持って来るわ」

「うん、見たい」

「翔子ちゃん達は、毎週土曜日に図書館に来てるの?」

「うん、土曜は大体来てる」

「ほな、僕も来るわ。これからもよろしく。千夏ちゃんも、よろしく」



 僕は、ようやく翔子に巡り会うことが出来た。となると、問題は……3人娘の方だ。しまった、ノリでキスしてしまった。どうしよう……?







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