第14話 願い事

 今…




 何て…


「消えたいならさぁーあのさぁーすぐに殺すからさー!あのー!」


 小さな子供が落としてくる言葉が胸に当たって苦しい。


 何が起こっているのか分からず、口を開けて、ただ上を見ていた。


「あのさー!あのー重いからさー嫌なことばっかさー集めるとさー重いからさー!そのー!あのーどんどんどんどんどんどん下に行ってそれからさー!どんどんどんどん固まって動けなくなるだよー!」


 言われてみれば、思うように力が入らない。

 動けないわけではないけれど、重い布団を掛けられている様な拘束感と安心感が共にあった。




 ああ…


 なんか…


 もう…


 このままでいいや…


 どうでもいい…


 ずっと…


 ここに居よう…




「あのさー!べつにさーあのーあのさーどっちでもいいんだけどもさー!あのー!殺すのはすぐに出来るし自分でも出来るでしょー?いつでもじさつオッケーだしさー!」


 自殺………オゲ?


「わざわざわ眞さまにお願いしなくてもさー!しぬ願いはさーあのあのぉ絶対かなうってさー決まってるからさー1秒後か百年後かしぬ願いはさぁみいーんな!かなうだよー!だからさーほかのお願いごとてしてみたらいいんじゃないのー!それってさーあのそのそれの方がさーぜーったいお得にきまってるじゃない!」


 お得…




 願い事…


 自分の願いは何なのだろう…


 勉強…


 スポーツ…


 恋愛…


 仕事…




 全部駄目。


 みんなが普通に出来る事が出来ない。


「あのさあのー!あのーそれってさーにんげん全部ー?にんげん全部ができることってなになのー?なになになになにな…!」




「人間全部じゃないかも知れないけれど…大体の周りの人達が…簡単に出来る…当たり前のことが…出来ないんだよお…」


「簡単は簡単だから簡単に出来るだよー!あの簡単はさーあのぉーおのおのだからー!おのおので出来ること出来ないことがおのおのちがうんだからさー!もしかしてひょっとしてそれってさーそれってもしかして出来ないことやりたいのー?」




「分からない…やりたくないけど…色々出来るようにならないと…みんなに迷惑だし…役に立たないし…乗り越えなくちゃ駄目なんだよ…大人なのに出来ないなんて…恥ずかしいんだよ…だからもう…誰にも会いたくない…誰にも惨めな自分を見られたくない…」


「ふーんそれってあのー!出来ないことがさー出来たら役にたつのー?役にたつって誰が決めるのー?役にたたないとだめなのー?出来ないことはしぬ前に出来るようになるのー?しぬまえに何回出来るのー?それってー!あのそれって出来ることのほうがいっぱい出来てさー上手に出来てさーあのあのさぁあのお得なんじゃないのー?」


「上手に出来る事なんて…何も無いよ…居ても居なくてもどうでもいいんだよ…自分…何で居るんだろう…」


「いみなしいみなし!あー!そーいえばさっきさあのあのーすごい!役にたってただよー!眞さまに巻物を渡したじゃないのー!」


「巻物………あぁ…あんなのは…ちょっと押し出しただけで…」


「それってえっとぉ簡単に出来るから簡単で簡単に出来ない人は簡単じゃないだよー!あのあの日あのあのさーあの時あのーあの場所に居なかったらみんなの願い事は叶わなかったんだからさー!えーちゃんの簡単も役にたってるじゃないのー!」


「たまたま…ただ…居ただけで…」


「それってあのーひょっとしてさー!そのまま居るだけでいいんじゃないのー!そのまま居るだけでさぁー!役にたってお得じゃないのー!」


「まぁ…なんか…役に立ってるなら…良かった…」


「うん!役にたつけど全部いみなし!」


 い…

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