第11話 困惑

 遮る物は何もない。

 眩しく晴れ渡る青空の下、白とピンクの丸い花が、ぽんぽんと無数に咲いている。

 一面を覆い尽くす花は、両目2.0の視力では、その果てを確認出来ない程に、何処までも広がり、圧巻の美しさだった。




 これは…


 どういうこと…


 広い…


 広過ぎる…


 どういうこと…


 今…


 何時だ…


 どういうこと…


 いったい…




 どういうこと…


 唖然として広大な景色を見渡していると、遠くの花間から何かがぬっと現れた。


 目を凝らしても両目2.0の視力では、はっきりと見えない。


 そのうちなんとなく、人の様に見えてきて、なんとなく、こちらを向いている様な気がして、なんとなく、目が合っている様な気がした。

 慌てて扉を閉め、祭壇柄のカーテンへ駆け寄って捲ると、門へ続く参道は薄暗い。


 どうなってる…


 扉へ戻ると、玉葱の絵は狐の絵に代わっていた。

 扉は1つではなかったのか、玉葱の扉は何処だと、近くの壁を触って確かめてみても、手のひらに何かがぼろぼろと付いただけで玉葱の扉は無かった。




 どうなってる…


 狐の絵は、白くて細くて赤いスカーフを着けていて、どこととなくシロ吉に似ている様な気がした。

 取り憑かれたように無意識に伸びた手が狐の絵に触れると、扉はすうっと開いて、そこには、無数の狐の石像が置かれていた。


 狐塚…


 そんな…


 狐塚は本殿から少し離れた所にある筈…


 数が多くて、スペースに入りきらなかった石像を、取り敢えず此処へ置いたのだろうか…


 それにしたって、先程の花はどうしたのか…


 扉の外へ身を乗り出して見ても、右も左も石像ばかり。

 どの石像も、薄闇からこちらを見ているようで不気味だった。

 外の明るさは元通り薄暗い。

 青空の方がおかしいのは分かっているし、本殿の裏側が、あんなに広いのも有り得ない。

 だけど、あの美しい景色がもう一度見たくて、出でよ花よと扉を閉じだり開いたりパタパタやってみる。

 カーテンまで行って参道を覗いて戻っても、扉の絵は狐のまま変わらない。


 パタッ


 パタパタッ


 パタッ




 パタパタパタパタパタパタ…


「ナ……」


 …パ………タ………




「……イ」




 やめてよー…


 この状況で声が聞こえるなんて怖すぎる。


「……イタイ…」


 ひぃっ!!


 咄嗟に扉から飛び退いた。

 痛いというワードに、血だらけのお化けが頭に浮かんで恐怖が倍増する。


 嗚呼、ミラクル狐面は、まったく何処へ行ってしまったのだろうか…


 じとじとでも良い。

 部屋の隅に現れないかと見回した。




 あ…


 そうか…


 外に居るのはミラクル狐面ではないか…


 扉を少しだけ開けて、ぎょろぎょろ見回すと、石像の狐達の中で髪の毛が動いた。

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