第10話 墓のはなし

「はぁ~♡ きもちいぃぃ~~~♡♡♡」


「志麻ねぇ、壺風呂好きだよねー。狭くない?」


「狭くないわっ。むしろ、この狭さが好きなの!

 ……それよりも、今日は突っ込まないのね。私の色っぽい台詞に♡」


「あーなんかもう面倒になってきたんだよね。だってこれ、十話も続いてるんだよ。

 こんなどうでもいい内容に十話も! 読者も少ないのに!!」


「えーでも意外と読んでくれた方からは好評みたいですよぉ~♡

 やっぱり女湯に美人三義姉妹ってとこがなんですかねぇ~♡」


「香穂……うまくまとめたな。ってか、それが言いたかったんだな。

 ……いや、二人してハイタッチとかしないで。恥ずかしいから」


「ねぇ、二人は、お墓をどうするかって考えてる?」


「志麻ねぇ、もうお墓の話なんて考えてるの?」


「香穂は、まだ新婚ですぅ~!」


「そんなの関係ないわ! 人間いつどうなるか分からないのよ!」


「そりゃまぁそうだけど……う~ん……私は墓とか別にいらないかなぁ~。

 死んでからも娘たちに手間をかけさせたくないし」


「志麻義姉さんは、どう考えているんですか?」


「ふっふっふ……よく聞いてくれたわ!

 私の遺灰はね、エジプトのナイル川に撒いて欲しいの♡」


「………………は?」「え……いやそれはちょっと……」


「子供の頃からの夢だったの! エジプトへ行くのが!

 でもでも、戦争とかコロナ禍とか円安とか色々あった所為で、なかなか行けなくて……このままだと死ぬまでエジプトに行けないんじゃないかって不安なのよー!」


「いやー……まぁ気持ちはわからんでもないけどさぁ、なんでエジプト?

 ってか、行ったこともない場所に遺灰を撒かれて、水が肌に合わなかったらどうすんの。知り合いも言葉も通じないんだよっ」


「そうですよ。外国の水って、日本の水よりも雑菌が多いから、少しでも口にするとお腹を壊すって言うじゃないですか~。死んでからも腹痛で苦しむとか辛すぎますぅ~」


「二人とも何を言っているの。死んだら、水なんて飲まなくても死なないのよ!

 だってもう死んでるんですもの!!」


「…………」「…………」


「でもね、うちのパパにそれを言ったら、『何言ってんだバカかお前』って冷めた目で見てくるの~ひどくない??」


「いや、それは兄貴が正しい」

「そうですね……ちょっと香穂もついていけないかもぉ~……」


「だから私、うちの息子にお願いしたのよ。ママが死んだら、遺灰をナイル川に投げてくれる?って」


「えっ、あんた五歳児になんちゅうことを頼んでるんだ」


「あら、息子は『うん、わかった!』って快く引き受けてくれたわよ~」


「…………かわいそうに」「…………かわいい♡」

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SPADABEL〜3人の義姉妹が温泉に浸かりながらどうでもいい話をただ駄弁るだけの話〜 風雅ありす @N-caerulea

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