第11話 隣の町へ
「城下町を出たのはいいですが、当てがありませからね。どうしましょうか。」
翌日、僕たち三人は城下町を出た。
しかし僕はこの世界のことはわからないし、アルトも街を離れるのは久しぶりだという。
「地図をみると、先ずは西から行ったほうがいい。西はまだ範囲も狭められるし、村も伝統あるところが多いしな。」
「そうですね。そうしましょう。」
旅とは言っても、全部が徒歩なわけじゃない。
馬車が拾える時は馬車を拾うし、ヒッチハイクして荷台に乗せてもらったり。
この世界の人は、優しい人が多いようだった。
しかし、僕が住む世界とは違う。
車はないし、電車もない。
辛うじて汽車があるくらいで、他にはなにもなかった。
「アルトの魔法で飛んでいければいいんですがね。」
「悪かったな。知らない場所には飛べねぇし、そんな長距離二人も抱えて飛べねぇんだよ。」
「そうなんだ。」
アルトは風を操る魔法が使える。
テナも何かしらの魔法を持っているはずだ。
「お前こそ、なんかないのかよ」
「ありませんね。僕が役にたつとしたら暖が取れるくらいですかね。」
僕には疑問があった。
「2人は、生まれた時から十二使徒なの?」
僕は疑問に思った。
楽譜を誰かがずっと持っていたのなら、受け継がれたりするはずなのに。
それこそ、教会とかにあってもよさそうなのに。
「そうですよ。十二使徒は生まれもって楽譜を持っているんです。
先代の十二使徒が亡くなったりした後は、次に産まれてくる人の所に行くようです。」
「楽譜のまま保管しないの?」
「うーん、おそらく十二使徒たちは皆、伝承の娘の言葉を守り、隠しているのでしょうね。
現に、私たちはできるだけ魔法は使わないようにしていますからね。」
テナは口に人差し指を当てて、「水色君も、腕の聖蹟は人目につかないように隠した方がよいですよ」と言った。
「テナの魔法は?」
「私は炎を操ることができるんです。
ですから、アルトと二人でしたら結構頼もしいと思いますよ。」
「風を上手く扱えば焔は力を増すからな。」
二人はとても仲のよい双子だった。
まだ少ししかともに生活してないけど、それだけはよくわかる。
それにしても、僕の魔法は何なのだろう?
「水色君の魔法はなんでしょうね。
私たちは自分の魔法の力を自覚してから聖跡を手にしたんです。
ですから、先に聖跡を手にした水色君はどんな魔法が使えるのか気になります。」
テナは不思議そうに首を傾げた。
その話によっては、十二使徒が自分が十二使徒だと自覚していない人がいる可能性がある。
「水色君、たぶん私も今同じことを考えてしまったと思います。
十二使徒を探すにも、もしかしたら腕に聖跡が現れていないかもしれませんね・・・」
テナは頭を抱えて言った。
・・・・僕たちは目的はあるものの、当てのない旅をしていることに気がついてしまった。
何か他に手がかりがあればいいのだが・・・。
「アルト、テナ、ちょっと待って。」
何か音が聞こえてきた気がした。
ラッパのような、真っ直ぐに響く、独特な音。
「なんか聞こえた気がして。」
でも、なんで急にそう感じたんだろう――――――?
「え?何も聞こえないですが。」
「今も鳴ってるか?」
「うん。なんだろう、」
僕には音がするような気がした。
耳鳴りにしては音が低いような気がする。
そんな風に話しているうちに隣町の近くまできていた。
城下町からこの町まではかなり遠かった。
お城のラッパでは無いはずだ。
「町についた・・・・」
僕たちは町にたどり着いた。
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