第23話 馬車内・貴羽
馬車にエスコートされたアオちゃん。豪華な馬車にはアオちゃんとフェリックス殿下が乗った。私は後ろに連なっている二人の乗った馬車とは質の違う馬車に乗せられた。悪い意味で、質が違う馬車だ。
私は一人でも良かったのだが、先ほど目を覚ました時にフェリックス殿下の周りにいた数人が乗ってきた。
ファーレン様は騎士であるらしく、馬にまたがりフェリックス殿下のそばに走って行った。フェリックス殿下はアオちゃんをエスコートし、私はその後ろから促された馬車に乗ろうとしたが、ファーレン様がいつの間にか横からスッと手を差し出してくれた。
「キハネは聖女とどういう関係?」
私の向かいに座った緑色という不思議な髪色の男性が声をかけてきた。この緑色の人の目が、異様にギラギラして見えて居心地が悪い。そして怖い。
「私は、アオちゃんとはただの幼馴染です。それ以上でも以下でもありません」
それだけ言った。なんとか声を出したのだが、緑色の人は聞き返した。怯えすぎて声が聞こえなかったのかもしれない。
「わ、私と、アオちゃんは幼馴染です」
「ああ、そう言ったのか」
まだ馬車は動かないのか。この緑色の人といるのは、かなり気まずい。
「レヴィファス様、少し奥に寄っていただいて良いですか?」
さらにキラキラした人が現れた。緑色の人はレヴィファスというらしい。覚えておこう。
「キハネ様、馬車をご一緒させていただいてもよろしいですか?」
「は、はい。私、奥に寄ります……」
私が腰を浮かせると、キラキラした人は手で制した。
「レヴィファス様」
キラキラした人の目から、圧を感じる。がレヴィファス様は動じない。
「僕が先に乗ったんだ」
「レヴィファス様?」
今度は脅しにも似た圧を感じる声だ。
「……わかった」
レヴィファス様はついに折れて、横にずれた。
後から聞いたけれど、未婚の女性の横に男性が座ることは、貴族の中ではあまりよろしくないらしい。
「聖女様はアオちゃんというのですか?」
キラキラした人はレヴィファス様が詰めたので、私の正面に座った。
「僕は、アーデルハイト・オルトナと申します」
丁寧に頭を下げるアーデルハイト様に私も頭を下げた。
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