第22話 王城へ

「私が、魔王を倒すのですか?」

震える声で呟くアオちゃん。金髪碧眼が跪いた。

「僕はフェリックス・ヒストリア。ヒストリア王国の王太子だ。これから、僕が君を補佐し守るから、安心して着いてきて」

甘い微笑みでアオちゃんの手を取る。

「貴羽……」

非常に不安そうな表情だ。

「アオちゃん、大丈夫です。私も着いていきます」

「どう言うことかな? 君はただの聖女の付き人。もしくはメイドだろう? ただの人間を魔王討伐に連れて行くことはできないよ。君には王都での暮らしを保証する。聖女は僕たちが責任を持ってサポートするから、君にはもう用はないよ」

アオちゃんの腰に手を回し、フェリックス殿下は「さあ、こっち」とエスコートをし始めた。

「待ってください! 貴羽……あの子は私の大事な人なのです。一緒じゃなきゃ魔王討伐なんて怖いこと、私にはできません!」

フェリックス殿下の手を振り払って私の後ろに隠れるアオちゃん。涙目で訴える。

「初めてきた、右も左もわからない世界で、知ってる人が誰もいないなんて不安です。私の協力が必要だとおっしゃるのなら、貴羽にも私と同等の待遇を要求します」

厳しい目を私に向けるフェリックス殿下。その横からひょっこりと茶髪が現れた。茶髪は、よく見るとフェリックス殿下と似た瞳をしている。いや、フェリックス殿下よりくすんだ色の瞳だ。

「殿下、女性にその言い方は怯えてしまいますってば。失礼しました聖女様、キハネ様! オレはファーレンって言います。ファーレン・オースティン。魔王討伐はオレも参加するので、よろしくお願いします」

ニコニコと頭を下げて、アオちゃんと私に視線を合わせる。

「実は、殿下はこう見えて、あまり女性慣れしていないんです。許してください」

「ファーレン」

「失礼しました!」

こそっと囁いた言葉にフェリックス殿下が一言。ファーレン様はピシッと姿勢を正して、アオちゃんと私にぺろっと舌を出して下がった。

アオちゃんと視線を合わせる。

「フェリックス、様。ファーレン様に免じてお話だけはお聞きします」

「アオちゃん……」

アオちゃんは私の前に立った。無理しないで、と言おうとしたら遮られた。

「貴羽、大丈夫よ」

フェリックス殿下は何やら物言いたげな視線を私に向ける。

――付き合いの長さもあるんだから、そんな目をされても困る。

私はそろ、と視線を逸らした。

「では聖女様、キハネ様。王城へお連れします」

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