9 いつの時代も下ネタは楽しいものです

 魔族には、ある勇者の伝説が伝わっている。


 その勇者とは、魔族にとっては絶対的な弱者であるはずの人間族の産まれだった。

 その事実は当時の魔族たちを驚かせた。


 魔族たちの常識では、力も、知性も、寿命でさえも魔族は人間族を大きく上回っていた。負ける要素など一つも無い……はずだった。

 しかし、魔族を脅かしたのはあろうことかその見下していた人間族の一人。

 

 勇者は、魔族をおびやかす存在となっていた。その魔族の中でも、主に女性から恐れられていたという。

 屈強な男の魔族たちは勇者に挑み、しかし返り討ちに合う。その結果として女を奪われてしまう。


 彼をその目に見た魔族は、口々にその者のことをこういい伝えた――


   〇〇〇


「股間から立派な剣が生えた勇者であった……と」

 伝説を語り終えたサキュバスのエル。

 黙って聞いていた王妃と椿己。椿己は王妃を一目見ると、その視線に気づいた王妃は首を横に振った。

 おそらく、その伝説は魔族のみに伝わるもので、人間族には存在しないもの。

 そこから椿己は一つの結論を導き出した。


「……それ、たぶん昔の魔族の悪ノリど下ネタだと思うぞ」

「んなっ!?」

「そんな酒飲みのおっさんが考えそうな下ネタが伝説なわけないだろ?」

「で、でも! 魔族の間ではこの伝説は確かに伝わっていて、神殿にある石碑にも刻まれているのですわ!?」

「絵画や彫刻は? そのチ〇ポコ勇者の姿を現す何かは残ってるのか?」

「ないですわ……」

 

「男性のまつわる物語なら、この国にもあります」

 問答を見ていた王妃は、唐突にそんなことを言い出した。

 椿己とエルは口を閉じ、王妃の言葉を待つ。


 そして王妃は語り出した――  


   ○○○


 ある王は股間から生えた聖剣が小さかった。

 おしまい。

  

   〇〇〇


「……それだけ?」

 ほぼ一言二言の言葉を告げた後にうんうんと頷いた王妃。椿己とエルは何を聞かされたのか意味もわからずに目を点にしていた。

 すると点になった目で見える視界に、ドアの隙間から顔を出す一人の男が見えた。

「敵四天王を捕らえたっていうから来てみたのに、なんで悪口言われてるの……?」

 その男は、現国王である王ナホール。


 伝説の、小さき聖剣を持つ王である。

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聖剣チソポカリバー ~俺のチソコが最強の剣になった件~ ☆えなもん☆ @ENA_MON

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