美人JDの虐めを見つけた俺氏、趣味のドローンで告発したらハーレムルートに突入する。
永野邦男
第1話 告発動画
『何やってんのアイツ』
『さっさとやればいいじゃん』
『こんな所で時間使いたくないなぁ。ねぇちょっとけしかけなよ』
『えー、だる』
音声はバッチシ、人物像も鮮明だ。
『あー、泣きそうじゃん』
『うわ最悪。泣けばいいと思ってるの?』
『何だかなぁ。可愛いからってああいうの許されるんだぁ』
『ワタシ帰ろうかなー』
俺がスマホの画面上で指を滑らせたら、カメラ視点が移動する。背中側を写していた所から、側面が撮影された。
『つーかさ。何で辞めないのあの子』
『分かんない。やっぱ先輩のお気にだからじゃない?』
『まじ勘弁。ああいう子いると、場が乱れるのよねー』
『伊月、なんか睨んでるじゃん。さっさとやれよー』
『ウチ的に流川の方が嫌。顔変えずにやってんの』
『あー、ムカつくー』
自分達が撮影されているとは知らない彼女達を一度フォーカスする。最近流行りのツヤ感があるメイクを施した彼女達は、倉庫の陰に隠れながらフラペチーノとやらを飲んでいた。
(ムカつくのはそっちだ)
俺は彼女達を一旦ぼかして、奥にいる人をアップする。
部活やサークルが使用する棟の傍にある、ゴミ捨て場だ。そこではビリビリに破かれたゴミ袋をまとめ、一から詰め直す二人の女性がいた。この二人の顔は影になるようにして、可能な限り後ろ姿を映すに留める。
大学の講義中という事もあり、人気は少ない。本来ならもう少し居るのだが、タイミングというものは恐ろしくて、この数十分は一際人通りは減るのだ。
(そのまま)
『あー、もう直ぐ人来ちゃうね』
『えっ、帰ろうダルイ』
『今日オンラインだっけこの後』
『しらなーい。どうせ出席とらないし』
『えっ、この後どうする?』
(うひゃー)
予測通りに動いてくれた彼女達に、俺は心から拍手を送る。脚元に置いたタブレットでは、こちらも予想通りの反応が現れていた。
【やば】
【ヤバイ】
【特定はよ】
【○○大学っぽい】
【Fラン?】
【クソ○スじゃねーかwww】
【奥の子写せ】
じゃじゃ馬はこの際、多ければ多いほどいい。ただコメント欄の要望には応えられない。
俺はスマホを操作して、再び屯している女子軍団の方にフォーカスをあてる。
『やっばオンライン注文出来んのだけど』
『は?まじ無理』
『えー、別の店行く?』
『いやそれはダルイ』
有名カフェの新作ドリンクが出たんだったか。これは全く偶然だし俺は知らないけど、そのカフェには感謝しなきゃな。
何故っていえば、そろそろ向こうも気がついてくれる筈だから。
『ん?何これ』
『どした』
『TikTokのメッセージメチャきてない?』
『うちのインスタも通知えぐ』
『え、何これ』
しかし最近のマイクは凄い。声量が下がったのに、言葉は明確に聞き取れるんだから。
『は?』
『ちょ、マジ何』
『これウチら?』
ウチラだよ。
『何で私達映ってんの』
『え、映されてるのなに?』
『わかんない、マジなに?』
おー、心当たり無いのか。それはヤバいなぁ。
【無意識でイジメかよwww】
【嫉妬乙】
【ブス○ね】
【早く後ろ写せ】
案の定コメントは荒れた。画面では焦る軍団がスマホをガン見している様子が写るものだから、更に加熱していく。
慌てた様子で逃げかえる彼女達の後ろ姿を撮り終えると、俺はドローンのカメラをオフにした。
「いた」
「真央?大丈夫?」
「うん。あれ、え……」
「どうしたの?」
「見て……」
ドローンに括り付けた紙玉を落として、彼女達を振り向かせる。上空に逃したドローンを近くまで移動させてから、俺は茂みの中で体勢を立て直した。
二人は居ると思っていた女子達が居らず、周囲が何やら騒がしいと気がついたみたいだ。片付け終えたゴミ袋をゴミ捨て場に出した頃には、大学の職員が駆けつけている。
「よし」
これで俺の出来ることは終わりだ。胸をすく爽快感で鼻が高くなった俺は、ふとドローンの事を思い出した。
「やっべ、嘘だろ」
まさかと思って確かめたら、そうだ。練習では十回連続で成功したから、本番も大丈夫だとおもったのに。
茂みの中にある木の枝葉に、愛用のドローンは引っかかっていた。
「何でだよー」
人が増えてきた今、ここで騒がしくすると不味い。俺はどんどん増えてくる人声に背を向けて、ソソクサとこの場を立ち去る事にした。
「あ……」
その時茂みに脚を取られる。無様に転がった俺は、殆ど関心を惹かれずにすんで助かった。
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