第27話 百年目

 大量の金貨を先程乗ってきた奴らに乗せることで馬車を借りるお金を削減。やはりあそこで借りたのは間違っていなかった。こっちで借りたほうが安く済んだという現実は見なかったことにする。


 変な生き物に引かせて帰ろうとしていた時だった。聞き覚えのある声が聞こえてくる。The 日本語文、半殺しにされたのを思い出す声。


「ここで会ったが百年目! その首討ち取ってやるぞ!」


「……元気だったか? 天野あまの 勇成ゆうせい


 両者とも臨戦態勢。黄金の武器が形を変え、槍となる。前の戦闘で黄金の武器を使っていたが彼もまた黄金の魔女に気に入られた存在だったということだろう。お金ではなく変形する武器をもらったということだ。やはり魔女の使徒より勇者の方が気に入れやすいのだろうか。彼女も魔女だあるため勇者は敵だと思うはずだが……


 考えてもあの金ピカに光る魔女の思考など読めないので諦める。目の前に勇者がいるというのにそんなことを考えている暇はない。こちらも能力復讐者 能力オーバーエフェクト 能力オーバーアクション 能力勝利への途中式己の最大限の力を出す。立ち上る魔力はハッタリでは無い。ハッタリも含まれているが今度は全てでない。自身の成長がよく分かる。


「解を出せ!」


『――解。普通に。』


 この能力ふざけてんだろ?


 愚痴をこぼしつつも負ける事は無いと思っている。こちらは戦った経験のあるアセナ、エルフだから強いだろうララノア、普通に厄介なセレーナも居る。このメンツで負けるわけが無い。この人数に対応できるとは思えない。楽勝というものだ。


「何のために俺がここに来たと思う? この単身で乗り込むには訳があるとは思わなかったか?」


 鎧の色が変わっていく。正確には上から金に覆われて行くだけなのだが、


「アセナ、アイツを持っちゃダメだぞ。鎧に刺される。」


 なぜここで出会ったのか、考えれば分かる事だ。黄金の魔女に新しく何かを貰いに来たという事。この勇者は黄金の魔女に認められている。新しく貰う事も造作も無い事だろう。自由に変形出来る鎧ともなる武器を新たに手に入れた。変形できるということを考慮すれば全身が棘のようになる可能性がある。圧倒的な戦力の差はあるが油断はできない。


「さて、準備は整ったか? 行くぞお前達!」


「《大氷河》」


 一直線に地面が凍り始める。凍てついた地面からは冷気が発せられ近づきたくもない。勇者はそれに足を拘束され身動きが取れなくなる。絶好の機会。


 アセナがまだコントロール出来ない魔力を力任せに解放し、勇者を目掛ける。防御力に自信でもかあるのか一向に動こうとしない。


 とてつもない衝撃音と共に砂煙が上がる。地面を覆う氷まで粉砕する威力伝わった衝撃波は黄金にも伝わり周りの家にも被害が出る。それをもろに食らったのだ生きていては困る。


 流石に死んだだろう。フラグとも分かりながら確信する。


 そしてフラグ回収。大きな黄金の盾に守られ氷も抜け出している。


「そりゃ一筋縄では行かないか……」


 ゆっくりと形を変えていく黄金を前にどうするべきか分からなくなる。一手目の氷の拘束も避けようとしなかった。それほどまでに自身があるのだろう。現実にもノーダメージだ。


 攻防共に強い。しかし向こうは一人しかいない。どうやって数の有利を生かすか。このまま波状攻撃のように削っていくのが途中式さんの言っている事だ。しかし、あくまでもこの状況下での話。相手の仲間が来ればもう一度解き直す必要があり、勝てるとは限らない。


「《死霊の呪い》」


 セレーナが攻撃を仕掛ける。死霊系の魔法をあの勇者は知らないだろう。実際見るに困惑している。黄金の鎧により腕は潰されていないが、動きは鈍る。だがそれでも余裕そうな表情を浮かべたまま堂々としている。黄金を身に着けた者は堂々とし始める性質でもあるのだろうか。


「《大氷弾》」


 呆けた事を考えていると地を影で覆うほどの巨大な氷が空中で生成される。ララノア自身の魔力で作られた氷は周りの水蒸気も使いすぐに大きくなっていく。重さに耐えられなくなったように突然落ちる。何にも抵抗もせず、ただ潰されるだけ。


 激突の衝撃により粉々に砕け散る氷が美しく見える。綺麗な白色……


「これでも死なないのか。流石勇者と言ったところかな?」


 丸く固められた黄金が周りを包み氷は届いていない。


「悪い魔女に加担する極悪人どもめ! これが俺の力だ!!」


「強欲はダメで何で黄金は良いんだよ? おかしいと思わないか?」


「知らん!!」


 ダメだこいつ……


 話にならない余談を遮るようにアセナが先を急ぎ走り出す。先程と全く変わらない攻撃方法。ここからという事か武器を構える。


「混金武器・アックス!!」


 すぐさま形の変形が起こる。アセナなど一刀両断できるのではないかと思う程の大きな斧となる。アセナの魔力の乗った一撃とぶつかり合い衝撃が音で伝わる。すぐさまアセナのに連撃を入れようとするも武器が変形し対応さらに追撃を繰り出す。互角だ。前回も戦った事のある二人だお互いのパターンは大体わかっているだろう。手の内で言うと新たな武器を入手した勇者の方が有利だがセレーナの下で魔力の使い方を教わったお陰で対応できている。かろうじて避けているも、深く罅割れた地面から攻撃の威力が伺える。


「それぐらい俺だって出来るわ」


 拳を握り思いっきり地面を叩き割る。オーバーアクションの効果によるものであり純粋な力技では無いものの、力を見せつける面では効果抜群だろう。そう敵はアセナだけではない。確かに強くなっているかもしれないが、負けるとは思えない。


「俺はこれだけじゃないぜ!?」

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