世界を司る機関から危険な魔物を討伐せよと命じられたのは、とある『護国士』のふたり──素直で行動派なレンドール、そして思慮深く穏やかなエラリオ。
ふたりは故郷の村から互いに研鑽しつつ育った、自身の半身とも呼べる幼馴染だった。
魔物の特徴とされる『黒い瞳』を持つ存在に辿り着いたふたり。しかしなんとその姿は邪悪にはほど遠い、雷を怖がるようなただの少女だった。エラリオは少女を庇い、名誉の仕事を失いながらも逃亡。レンドールは歯痒さを抱えつつ、政府の役人の監視付きで彼を追うこととなる。
お互いの知り尽くした思考を先読みし、チェスの駒を進めるように近づいていく二人。
一度分たれた道はもう交わることはないのか。
ないとしたら自分たちには、どんな道が待っているのか。
それでも会いたい。会わなきゃならない。
きっとその先にしか、自分たちの物語の結末はないから。
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崇拝される『白』と忌み嫌われる『黒』という不思議な理念を基盤とした、本格的なハイファンタジーです。舞台設定がしっかりしている骨太なお話がお好きな方にとくにおすすめ。
どれも聞きなれない制度や名称のはずなのに、するすると「そういうもの」として読ませてしまう作者様の筆力の高さには脱帽です。旅の進め方ひとつ、買い物の仕方ひとつをとってもリアリティがあり、レンドールの旅に同行している気分が味わえます。
交通機関もGPSも発達していない、山や川ばかりのファンタジー世界。そんなところで逃走した人物を追うなんて無謀すぎる!と思ってしまうのですが、そこで『幼馴染』という設定が活きる。レンドールは地図を睨み、「エラリオならこうする」という予想を疑うこともなく立ててしまうのです。しかしそれは相手も然り。それどころかエラリオはなんだか、こちらに追ってほしそうでもあります。
お話の長さから予測できるとおり、この二人の追走劇はいくつかの段階があります。その節目にはレンドールがエラリオに追いつき、邂逅を果たすシーンとなるわけですが……とにかく毎回衝撃の連続。そしてアツく切ないです。
着実に会いたい人に近づきつつも、きっと私を含めた読者は「会うのがこわい」とさえ思ってしまうでしょう。それほどに二人の絆や信頼は厚い。けれど、だからこそ『結末』にいたるページを自分たちで繰らねばならない。
もーーっっ、男の子ったらこれなんだからあああ!!(本音)
数年をかけた、長い長い追跡の果て。心も体も大人になり、ほかに守るべきものも増えた二人。それでも、いやだからこそ互いの譲れぬ信念の刃もするどさを増すのかもしれません。
誰もがズタボロになりながら掴んだ、最後の答え。
それはぜひ、ご自身の『瞳』で確かめてみてください。
この物語の中心には、二人の青年がいます。
一人は主人公のレンドール。もう一人は親友のエラリオ。
幼なじみであり相棒である彼らが決裂するところから、物語は幕を開けます。
決裂、とは言いましたが、彼らは決して敵同士になったわけではありません。互いの信念、希望と責務がぶつかったがゆえに、袂を分かつことになるのです。
舞台は巨大な渓谷に囲まれた国。〈白の巫女〉の預言が大きな影響力を持ち、“護国司”が政を行い、“護国士”が治安を守る世界です。
レンドールとエラリオも、その護国士の一員です。
ある日彼ら護国士のもとに、白の巫女の預言が下されます。その預言とは「谷の先にすべてを滅ぼす黒き瞳の魔物がいる、その道を変えたければ魔物を倒せ」という内容でした。
果たしてレンドールとエラリオの前に、黒き瞳の魔物が現れます。しかしその姿は、年端もいかない少女でした。
幼い少女を巫女の予言どおりの魔物にさせないため、保護しようとするエラリオ。
護国士としての使命を果たそうとするレンドール。
二人の決別は、やがてこの世界の成り立ちの秘密にも関わる、大きな渦となっていきます。
この物語は、ある意味では「バディもの」と言えると思います。レンドールとエラリオ。二人の距離は遠く離れてしまいますが、それでもなお互いをよく理解し、信頼し合っています。
エラリオならこうする。レンドールならきっとそうする。
目の届かない場所へ行った相棒を、まるですぐ側にいるかのように、彼らはお互いを“見て”います。
その絆の深さ・強さには、他の誰にも踏み入ることはできません。
離れていても互いを理解し、離れているからこそ揺るぎない信頼を抱く。
常に一緒にいなくとも、これは立派なバディと呼べる関係ではないでしょうか。
それぞれの譲れない思いを貫こうとする二人の青年。そして希望を見出された黒き瞳を持つ少女。
預言の真意とは。少女は本当に魔物なのか。彼らが旅の終わりに目にする、世界の答えとは。
どうぞその目で確かめてみてください!
黒は魔物とされる世界。そんな黒い色を持つ魔物を倒そうとしたレンドールの邪魔をしたのは、相棒であり親友のエラリオだった――。
彼らは親友で相棒、その言葉の通りに互いのことをよく知っている。よく知っているからこそ、この追走劇は互いに知恵を振り絞ることになる。
さて。
最初は別離から始まる物語であり、中心となるのはレンドールとエラリオであると言えるだろう。
しかしながら物語は「ふたり」から徐々に徐々に拡大していき、果てには世界の謎にまで到達する。
これこそが、この作品を読む手を止まらなくさせる魅力だろう。この謎を、知らないままにはしておけない。
人物を中心に読むも良し。
世界について考察するも良し。
ぜひ、ご一読ください。
巫女から退治すべきと預言された、黒の魔物。レンドールとエラリオはその魔物を発見しますが、魔物が少女の姿であった事から二人は対立。
レンドールはエラリオを信じたまま、政府の人間による監視を受けながら魔物を匿う相棒を追います。
相棒としてよく知る相手だからこその、考えを読んでの追跡。魔物の影響を受けた獣との戦い。
読み応えのある追跡劇の果てに待っていたのは…。
そして物語はより深く。
魔物の謎、エラリオの過去、作り込まれた世界が魅力的で、徐々に明かされていくパートでは更に作品に引き込まれます。
そして新たなコンビでまた追跡へ。
移りゆく展開は読み心地が変わり新鮮な面白さを感じさせ、目が離せません。
道を違えても強い相棒の絆。個性的なキャラクターの軽快なやりとり。丁寧な筆致で人の思いが描かれています。
巧みな物語性とワクワクする世界観が広がる重厚なファンタジーです。
二人ならなんとかなると、信じて疑わなかった。
そんな護国士のレンドールのもとに届いたのは、白の巫女の真詞。
『《雲晴れぬ山の向こう、虹のかかる谷の先
黒き瞳の魔物あり
其は己を知らぬ
知らぬまま力を蓄え、そして、全てを滅ぼす》
道を違えたければ、それを探し出し、力付けぬ間に闇へ返せ』
レンドールは護国士として初仕事をなそうとする。
しかしそれを阻むのは、相棒であるはずのエラリオだった。
『魔物』と呼ばれた少女を守るエラリオと、そんな彼に剣を向けるレンドール。
レンドールは護国士としてエラリオの行方を探すため、アロという人物と行動を共にする。
互いに互いのことがわかるからこそ、お互いの性格を見抜いた対決が始まった……。
この国は魔物から守られている、安全な幸福な国。それゆえに、『外者』が魔物から逃げるためにやってくると言われている。だが『外者』は、ここへ来る前のことを覚えていなかった。
『外』にはなにがあるのか。エラリオの真意はなんなのか。本当に預言どおり、かの少女は全てを滅ぼすのか。たどり着いた先で、レンドールは何を選択するのか。
しょっぱなからから激動の、親友との断絶シーン。
命令を受け、ついに発見したターゲットの”魔物”を倒すべく剣を振るった主人公レンドール。しかし、その攻撃を防いだのは相棒で親友のエラリオだった。
黒い瞳の少女……彼女は間違いなく宣託の魔物のはず。しかし親友は彼女をかばい、そして姿を消してしまう。彼の突然の行動の意味と理由とは。
その謎と真意を問うために、行方をくらました親友を追う事になる主人公。彼の旅路の過程で徐々に真実に近づいていくストーリー展開は、先がとにかく気になって仕方がない。
魔物を連れて逃げた人間の元相棒という事で、レンドールには監視がつけられるのだけど、一癖も二癖もありそうな監視人もかなり魅力的で、二人のコンビ的やりとりも楽しい。追う側レンドールと逃げる側エラリオとの頭脳戦も見どころ。
世界の謎に触れながら、魅力あふれるキャラクターが人間ドラマを織りなしながら展開される骨太ファンタジーで、腰を据えて読みたくなる一作です。