第52話 急ぐより、少し立ち止まって
「マオさん、ここで休んでいてください」
大会から帰宅後、フランに誘われログの家に来たマオ。リビングにある椅子に座るように言われるが、一人だけ座るのに躊躇して、フランの申し出を断るように首を横に振った
「今からご飯を作るんでしょ?手伝うよ」
一人座るのを躊躇っていると、フランがエヘヘと笑って首を横に振った
「いえいえ、今はご飯ではなく」
そう言うと、テーブルの真ん中まで移動して、また笑うフラン。それをマオが少し首をかしげ見ていると、テーブルに溢れるほどのお菓子やケーキが現れた
「少し作りすぎじゃないか?」
ログが呆れながらフランに問いかけると、フランはニコニコと嬉しそうにテーブルにあるお菓子を一つ手に取った
「いえ。おやつはたくさん食べれますから」
「おやつの魔力は残していたんだな」
「ええ、もちろんです」
お菓子を一口頬張り頷いて答えると、テーブルの上に座ったフランの隣にいつの間にかティーポットと三人分のティーカップが置かれていた
「紅茶まで……。今日はすごいね」
「ええ、明日に備えてちゃんと休まないといけませんから」
ご機嫌でティーカップに三人分の紅茶を注ぐ。マオの前に一口サイズの焼き菓子と紅茶を淹れたティーカップを差し出し、今度はリビングの入り口付近にいるログにティーカップを差し出した
「ご主人様も今、ご一緒食べますか?」
「いや。今は少し二階で休むから後で余ったのを食べるよ」
「分かりました。ちゃんとおやつを残せるように頑張りますね」
ニコリと微笑むフランにはぁ。と一つため息をついて、もらった紅茶入りのティーカップを持ちフランの機嫌の良い声を聞きながら階段を登っていった
「……こっち?」
一方その頃、ログの家から少し離れた場所でマリアが長い髪をなびかせていた。近くにあった大きな木に勢いつけて木の枝に飛び乗った
「もう少し先かな?どこにいるの?」
辺りを見渡しながら困り一人呟いていると、マリアのすぐ横を白い鳥が通りすぎていった。白い鳥の後を急いで追いかけ、白い鳥の体を両手でガシッとつかんだ。突然体が動かなくなった驚いた鳥が羽根をジタバタと動かし逃げようとするが、マリアは逃がさないようにぎゅっと強く力を込めて、白い鳥の顔をこちらに向け、嬉しそうに白い鳥に話しかけた
「ちょうど良かった。私を案内してくれる?」
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