第51話 少し触れた指先に

「やっと一日目が終わったー!」

 うーんと大きく背伸びをしながら叫ぶマオ。それを見たフランもうーんと背伸びをしてマオの頭にちょこんと座った

「さすがに練習でもこんなに魔術を使うことはないですから、ちょっと疲れましたね」

「そうだね。こんなに魔力を使う日なんてはじめてだよ。ログが参加してくれていたらもう少し楽だったのに」

 フランを落とさないように、ふぅ。と深呼吸をすると、周辺を見渡してログを探す

「そういえばまだ姿を見ていませんね」

 フランも辺りを見渡しログを探す。二人の周りは試合を終えた人達や応援に来た人達が大勢集まっていた

「そろそろ帰るからさすがに見つけないと……」

 ログを探すため、動こうとしたマオの前に座って休んでいたはずのフランが目の前に現れた

「ちょっと待ってください。私が呼びます」


「ご主人様、帰りましょう。来てください」

 ログに話しかけるようにフランがそう言うと、フランのピンク色の長い髪がふわりとそよ風に吹かれてマオが見とれていると、フランの前に突然ログが現れた

「試合は終わった?」

「ええ、今日の分は。マオさんの活躍でなんとか全勝です」

 ログに返事をしながら振り返り返事をして、マオの右頬をぎゅっと抱きしめた

「ううん。ほとんどフランのおかけだよ、ありがとう」

 フランを両手で優しく抱きしめるその手を見たログが少し驚いた顔をした


「怪我を治すための魔力を使うのも惜しいと治さなかったんです」

「治してあげなかったのか?」

「えーと、それは……」

 ログの言葉にふらんがあたふたと返事に困っていると、ログが指先を傷ついているマオの右手にちょっとだけ触れた。フランがマオから離れログの側に移動すると、触れられた右手を見ると、怪我をしていた場所が綺麗に治っていた

「ありがとう……」

 お礼を言いながら、右腕や少し擦り傷のあった左手を見て、綺麗に治っているのを見て驚きつつもログを見て嬉しそうに微笑む

「では急いで帰りましょう。今日はたくさんご飯を食べないといけませんからね」

 ログの左肩に座ったフランが会場の入り口の方を指差しながらそう言うと、ログがはぁ。とため息をついて、マオがフフッと困ったように笑った



「マリアさん。どうしましたか?」

 その頃、会場入り口付近にクラスメイト達と家に帰ろうと話していたミオが、少し離れた所で一人、空を見上げている女子生徒に声をかけた

「あの……。何かありましたか?」

 ミオが心配そうに再び声をかけると、ひらりと腰まである長い黒髪を揺らしながら振り向いて、ミオを見てフフッと嬉しそうに笑った

「なんでもないわ。この大会はもっと楽しい大会になりそうね」

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