「ここなら見れますね」

　フランを肩に乗せ、試合開始が近く騒がしい外の広場までやって来たミオ。人混みの中、一番後ろで隙間から試合を見ようとした時、すぐ隣で見覚えのある制服を来た女子生徒達が騒いでいた

「ミオ、頑張って！」

　女子生徒の応援の声を聞いて、マオが目の前にいる人達を掻き分け無理やり先頭まで来ると、ふぅ。と一つ深呼吸をして目の前にいる対戦相手を見るミオがいた

「マオさんとは戦い方が大分違いますね」

「うん、まあそうだね……」

　フランの言葉に呟くように答える。その声を聞いて、フランがフフッと笑った

「少し緊張してますか？」

「そうだね、ミオの対戦をちゃんと見たのも久しぶりだから」

「たくさん練習しましたし、マオさんの魔術なら大丈夫です。頑張りましょう」

「ありがとう、フラン」

　フランをぎゅっと抱きしめて返事をして微笑むマオ。すぐにミオの圧勝で対戦が終わり、駆け寄ってきた同じ制服を着る女子生徒達とニコリと笑うミオを見て、うんと一度頷いた

「そろそろ出番ですね、頑張りましょう」

　いつの間にかマオの隣に来ていたフランがマオの頬にぎゅっと抱きつく

「そうだね、頑張ろう」

　そうフランに返事をすると、ふぅ。と一つ深呼吸をした

「姉妹でも、こんなにも違いますね」

　その頃、会場の建物の屋上でミオの対戦をログと見ていたユグスが興味深げに呟く。ログからの返事がないことに気づいたユグスがログを見てフフッと笑う

「魔術の勉強になっていますか？」

　隣で一緒にミオの試合の様子を見ていたログに問いかけると、面倒そうにこちらに顔を向けた

「僕に聞いていますか？」

「君しかいないから聞いてるんですよ」

　ログの問いかけにユグスがそう返事をすると、再び試合会場から歓声が聞こえてきた。二人がまた試合会場の方を見ると、険しい顔をしたマオと楽しそうに笑うフランがいた

「もうすぐ君達の試合が始まりますね。君も出ますか？」

「いえ、フランが一緒ですから僕は出る暇ないでしょうし」

　そうログが返事をした時、ユグスに渡した本が二人の前に現れた。パラパラとページが開く本を驚く様子もなく二人が見ていると、本が白い鳥に変わりバサバサと翼を大きく広げ、どこかへ飛んで行ってしまった

「あの本はどこへ？」

「知りません、あの魔術の赴くままに。ですかね」

　鳥の行方を見ていると、広場の方から歓声が再び沸き起こり、二人が広場に目線を向けると、いつの間にか終わっていたフランとマオの試合に歓声が沸き起こっていた

「まだ君には魔力は足りませんが、あの使い魔はどうでしょうか」

「どうでしょうかね。だから今日来ましたから」

　ログがそう言い、ふと背後を見るとグレニア学園の先生達がユグスを呼ぼうとこちらを見ていた。ユグスも気づいて先生達に微笑むと、ログにも微笑み一歩踏み出した

「さて僕は少しここから離れますが、あまり騒がしいことはしないでくださいね」