第12話 和崎、赤井の足掻き

激しい戦いが続くが、それはいきなり終わりを迎える。

赤井のスーツから光が失せる。

そこにすかさず、白地の攻撃が入り、赤井は地面に激しく転がる。


 「ぐっ!」

 「ふむふむ、どうやら、限界があるようですね。

無理やり力を引き出して、3分ほどですか。

いいデータが取れましたよ。」


ゆっくりと赤井の元へと歩みよる白地。

赤井は無理やりスーツの力を引き出したためか反動で体に痛みが走り、上手く動かせない。


 「データが入ったベルトを回収するとして、あなたはどうしましょうかね?

まだ利用価値が、うん?」

 「がああああああ!」


白地の首に何かがぶち当たる。

その正体は和崎。

和崎はワニの口を使い、首を引きちぎろうとするかの如く、ギリギリと力を入れていく。


 「おお、スーツに食い込んでいますね。

こちらも限界を超えて来ましたか。」

 「ぐううううう!」

 「その代わりに理性はなさそうですがね。」


白地の言う通り、和崎の様子は人間というよりは獣の本能のように見える。

白地は引き剥がそうとするが、和崎の口はてこでも動かない。


 「鬱陶しいですね。

ちょうどいい。

スーツの力を引き出してみましょう。

はああああああ!」

 「!?」


白地のスーツが光りはじめ、食い込んでいた和崎の歯が押し返され始める。

それでも口を閉じようとする和崎に白地はワニ口の上下を掴む。

ゆっくりとだが、口が開いていく。


 「ががが!」

 「ふむ、スーツの性能も上がるとこんなものか。」


そのまま、首から口を引き剥がすと力任せに和崎を投げ飛ばす。

その威力は和崎の体が金属製の壁に亀裂を作るほどであった。

が、和崎はそのダメージを気にすることもなく、再び白地へと向かっていく。

その様子に赤井は疑問を抱く。

理性がないなら、何故こちらを狙わないのか?

ろくに動けない赤井は格好の獲物だ。

獣の本能で白地だけを敵と認識しているのか?

捨て身とも思えるその和崎の動きであるが、視点を変えれば、自分だけに注意を向けさせようとしているようにも見える。

今、赤井にできるのはまだ展開されているスーツの力を一点に集中するのみ。

右拳に想いを込めるように力を集中、後は白地の隙を窺う。

圧倒的なまでの白地ではあるが、本質は学者であり、格闘の経験はほぼない。

そのため、攻撃は大ぶりが多く、その分、スーツの力を無駄使いしている。

それに和崎はその攻撃を蛇のような動きでスルスルと紙一重によけていき、攻撃を仕掛けていることで相手の苛立ちが増していく。


 「ああ、もう、めんどくさいですね。

仕方ない、吹き飛ばしましょうか!」


ぐっと身を縮ませ、力を貯めると体を大の字に開き、スーツ表面から力を解放。

光の衝撃波が和崎を襲う。


 「ぐっ、がああああ!」


衝撃波の影響で和崎の全身の鱗が剥がれかけ、その鱗の付け目から血が滴れながら吹き飛んでいく。

和崎を助けにいきたいところだが、決定的な隙ができたことで赤井は痛む体に鞭をうち、一息に白地の懐へと飛び込みながら、力を集中した拳を叩き込んだ。

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