【小話】「この転生がひどい」
さて、異世界転生だ。死んだら別の世界に転生する。わかってるから、気持ちよく死ねた。
ただし、異世界転生にはリスクがあって、転生の担当官が誰になるかで大きく運命が変わる。何しろ、広義の「異世界」はグラハム数が必要なくらいに存在していて、それぞれに長けた担当官があてがわれる。それがルールだ。
俺の担当になったのは、ピンク色の髪をした巨乳の女神で、エロ同人誌で覇権を取れることを確信した。必ずや次の転生先で多世界送信技術を開発し、ドスケベ女神の存在を明確に伝えねばならぬという使命感が、俺の全身を包みこんでいく。
幸先は良好だ。心が勃起する。
「私は何度も転生したあとのお前だ、カトー」
「ウソだろ、俺かよ」
「そうだ。その頃の私は、共和政ローマの大カトーが何かにつけてカルタゴを滅ぼす演説をしていたのになぞらえて、『お気に入りの美少女はシコるべきだ。巨根のカトー、巨カトーとしてそう宣言する』などと言っていたな」
ブラックヒストリーがお披露目されて、ネットタトゥーどころか「全次元タトゥー」が神々のあいだでも共有されていることを知った。しかも、俺は未来で超好みのシコれる女神に自ら成っているらしい。
「ちなみに、私は今もビッグなペニスをメイン武装として所有している。例えるならば、過去の私よ。お前がグルンガスト弐式だとすれば、私は開始ターンから縮退砲を撃てるネオ・グランゾンだ。世界史ドイツでいえば、第一次のディッケ・ベルタと第二次のグスタフ列車砲およびドーラ列車砲くらい違う」
「なんでヒットする層が少ない例示を追加したのか、これがわからない」
「暗黒時代の阪神打線と、大正義時代の巨人打線」
「誰もが知っているけれど、炎上間違いなしのたとえをすればいいってもんじゃないだろ」
この余計な一言をガンガン言っていくのは、確かに俺だと確信できる。外側から見た自分はハチャメチャにうざったい。ドチャシコ外見のおかげで、余計にイライラとムラムラがコンツェルトを奏でている。今すぐ復活して、お気に入りのイラストレーターさんにスケベイラストの制作を頼みたいくらいだ。金銭は意志の前では問題にならない。ふたなりはアタッチメントである。「雨の中で傘もささずに踊る自由」と「ふたなり娘の玉と竿は着脱自由」は、文明の勝利の証と断言していいだろう。
「さて、これからお前は転生する。楽ではない世界だ」
「いきなり希望が失われた。焦らしプレイの基本を忘れるとは、未来の俺も大したことはないな」
「寸止めオナニーを繰り返した挙げ句、射精障害になった愚者が、私の目の前に一名存在する。彼は私に何かを訴えているようだが、果たしてそこに有望な論理性を見出すことが可能だろうか」
「わかった。俺の負けだ」
「負けるのはこれからだぞ、過去の私よ。お前は次の転生先で、負けに次ぐ負けを経験する」
俺は決定論を信じないので、言い返す。
「尽力によって、勝利者になることは可能だろうな。こうして、未来のスケベな俺に出会ったからには、タイムラインが書き換わるはずだ。勝利の栄光がピンク色に輝いているぞ。スケベでクレイジーな色合いだ」
「まず、次の世界は慣れ親しんだ地球の並行世界で、いわゆるポストアポカリプス状態に陥っている」
「いきなり終わってる指数が跳ね上がる要素が追加されたので、俺は転生先のチェンジを要求する。速やかに変更してくれ」
「チェンジはない。生まれ変わってから、変革を遂げてみせろ。もっとも、そうしないと死ぬし、死ななくても負けまくる」
希望さんがログアウトしました。なんてこった。典型的すぎる終末世界へご案内ときたもんだ。この分だと、地上は放射能や未知の病原体で汚染されている可能性が高い。
「劉邦みたいによ。負けに負けても、ここ一番で勝てばいいんだろ。そしたら、エンペラーズエンドだ。猜疑心にまみれた末の粛清実行が待ってるなら、ハッピーじゃないかもしれないけどな」
「お前はかつてヨーロッパと呼ばれていた地域に転生し、そこで感染すると淫乱ドスケベエルフになるリスクを負う」
「想像していた世界とまったく違った。完全にエロだ」
「だが、淫ドスエルフのパンデミックに対抗する勢力がある」
「なんだその略称」
「すなわち、超絶エロティカシスターズが、ウルトラ淫猥エルフの野望を食い止めんとしているのだ」
「対抗組織も別の病原体に感染しているだろう。それらしい単語をぶち込んで、ランダム生成したみたいな種族名だか勢力名だかをしてやがる。あと、淫ドスエルフなのかウル淫エルフなのか、名称は統一してくれ」
「ちなみに、淫ドスエルフも超エロシスも、みずほ銀行級の統合再編を経て現在の姿に至った。ウルトラ淫猥エルフは淫ドスエルフに合流した勢力で、なおも仁義なきスケベバトルにおける主力派閥であると断言できよう」
「メガバンクにドスケベ流れ弾が飛んでいった。みずほ銀行の名前が、『淫乱メスガキバンク』にならないか心配だ」
「このため、相互の勢力の衝突よりも、定期的な内戦のほうが凄惨なものとなっている。お前は人間として生まれるものの、感染によって淫ドスエルフとなり、第一勧業銀行に所属することになるだろう」
「スケベパワーにあふれたエルフの内部勢力について、みずほ銀行のたとえを引っ張るのはやめてくれ」
みずほ銀行は、もともと第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の三つが経営統合をすることによって生まれた。さらに、第一勧業銀行は第一銀行と日本勧業銀行が合併したものだ。
富士銀行はもっと複雑で、安田財閥の安田銀行が前身であり、財閥解体によって安田の名からの脱却を図る形で「富士山」にちなんだ名前となった。
その安田銀行のもとになったのが、明治に誕生した第三国立銀行で、のちに第三銀行に改称。ただ、第一次世界大戦の混迷や関東大震災の発生などもあり、合計で十一もの銀行の大合併が行われる運びとなった。安田財閥の保善銀行が主体となり、富士銀行になったわけだ。
これにて、第三銀行、明治商業銀行、根室銀行、神奈川銀行、信濃銀行、京都銀行、百三十銀行、日本商業銀行、二十二銀行、肥後銀行の「11P大乱交」が成立し、フジヤマヴォルケイノな元祖メガバンクが爆誕した。なお、現代には同名の銀行がいくつかあるが、いずれもこの時に乱パしていた銀行とは無関係である。
その意味で、特殊銀行である日本興業銀行はみずほ銀行になるまで「ぼっちちゃん」だったので、「日本興業銀行さんペニス大きいのね」とどこかの少女もご満足だろう。結果として、第一勧業銀行と富士銀行の熱い「3P」に巻き込まれ、終わりなき三つ巴セックスでシステムがいつもオーバーヒートしている。みずほ銀行は存在がドスケベ銀行なのだ。
こういうトンチキ話を内定辞退の時に言ってやったところ、「アツアツのカツ丼をキレた人事担当から投げつけられる」伝説ムーブを味わうことになった。銀行員はユーモア欠乏症候群に罹患していて、まったくかわいそうな職業だと思ったもんだ。もちろん、カツ丼はスタッフがおいしくいただきました。
「ようやく、わかったようだな」
「ゲッター線に触れる感覚を味わったよ。そういうことだったんだな。俺はこれから淫ドスエルフになって、『イカせゲーム』に参加して、負け続ける。しかも、そいつは乱入可能台だから、超エロシスまでもが参戦してくる」
「最初にやってくる超エロシスの刺客は、身長130センチメートルのHカップと、身長220センチメートルの前バージン後ろベテランだ」
「画面に『最強のふたり』というコメントが流れてくるのが見えた。強さしか感じない。圧倒的戦力だ」
未来の俺、この淫乱世界さえも戦い抜いてきたであろう女神が、淫靡な笑みを見せた。
「第三勢力もある」
「定番だ」
「もとは馬の耳が生えた獣人族だったが、『かくのごとき世界での生存はまかりならぬ』という運命力によって突然変異が起きて国家を形成し、崩壊世界に『
「スイスにとんでもないポルノ国家が生まれた」
「通称が『射精管理メイドマルディ』、すなわち謝肉祭を意味するマルディに射精と肉欲をかけた語句が付与されているため、略称の『射メイマル』で知られている」
「そのメイド、ミニスカ鴉天狗なうえに、超高速で飛び回って弾幕をばらまいて来るんじゃないか」
「何度でも言おう。お前は負ける。何度でも。さながらルナティックな戦いで、とても勝てそうにない。だが、何度でも勃ち上がるだろう。次こそは性界大戦の勝利者となるために」
ろくでもない世界だ。ソドムとゴモラが、そのまま全世界に拡張されてしまったようなもんだ。困ったことに、俺にとってはお似合いかもしれないと感じる。いずれ目の前のパワフルスケベガールになれるなら、モチベーションにもなる。何より、決定論を否定し、運命論をつまみ出す俺だ。この程度で気後れはしない。
「ありがとう。じゃあ、イッてくる」
「イッてこい。人倫が消え失せた世界へ」
これが、俺が「淫乱ドスケベエルフ帝国の興亡」に参加することになった前史だ。
「小話」をぶん投げる場所 真里谷 @mariyatsu2022
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