戦う神主家系の異能持ち雇用主と、進退窮まって偽装結婚することになりました

　佐藤 幸は、大学休学を決めた。
　顔も頭も名前も平凡、ずっと平均点人生を送ってきた自分には大きな決断だったが、父が病に倒れ、どうしてもお金と時間が必要だった。
　そうして受けたバイト先の面接は秒で終了。所長の氷室は長身かつかなり整った容貌の持ち主ながらどうにも様子がおかしく、言葉の選び方が不思議で、時折あらぬ方向を凝視し、妙に感の鋭い部分を見せる。
　詳細を訊けないまま始まった幸の不思議なバイト生活はしかし、急転直下、氷室と偽装結婚することになる。
　幸の方にのっぴきならない事情が起こり、氷室がそれに助け船を出してくれたのだ。
　期限が来たら終わる結婚。
　仮初の式に向けて精一杯準備を進めていた幸は、どんな小さなことも受け止めてくれる氷室に次第に惹かれていくが、そこに忍び寄る影があり――
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