第9話 少年と黒い翼の天使(※)

少年かれには天使がついている……。


物心ついた時からずっと病室に一人。


少年の父と母は一度たりともその病室を訪れたことなどなく。


少年は捨て子も同然だった。


少年はいわゆる流行病やまいにかかっていて。


その流行病にかかればそう簡単に治ることなどなく。


隔離された病室。


そこに訪れたのは……。


少年かれには天使がついている。


あの日以来、度々病室に天使が訪れるようになった。


天使と言ってもその羽根は黒かったけれども。


しかし、もう少年は寂しくなどなかった。


だが気がかりが一つあった。


「ねえ、どうしていつも悲しそうなの?」


問いかけてもその天使はただ優しく笑うだけだった。


「どうして羽根が黒いの?」


天使は答える。


「神様を裏切ったからかな」


少年はそれ以上聞くのをやめた。




身体中が痛い。気がつけば少年の周りには複数の男達がいた。


「――は処分対象」




真っ白だったはずの少年の心は黒く淀み、やがて鏡のように粉々に割れ散った。


苦痛だけが少年かれを支配する。


声が聞こえた、ような気がした。


あの天使の声が。


その声は悲痛な叫びであるように聞こえた。


そうだ、僕には天使がついてるからどんなにひどい目にあっても大丈夫……。


そして少年の意識は途切れた……。

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詩?集 chisa♪ @chisa124

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