第8話 女王《いけにえ》
荒廃寸前の世界。その世界に存在するとある大国に今まさに新たなる女王が生まれようとしていた。
新しい女王は、まだ七歳の少女だった……。
私が慕っている兄のような人はまだ帰ってこない。
今も尚、最前線で戦っているのだそうだ。
ご飯、ちゃんと食べているかな。怪我していないかな……。
とても広くて綺麗な――でも寂しい――お部屋の窓から、空を眺める。三日月がとても綺麗だった……。
そろそろ冬が近づいているからか?沢山の木は枯れている……。
彼のことなら心配はありません、とまるで私の保護者のように振る舞うその人はそう言った……。
長い黒い髪を後ろで束ね、真っ赤な瞳を持つその人のことを、私はどうしても好きになれなかった……。
いつも寂しい思いをしている私の心を慰めようとしてくれたのか?その人はいつもバイオリンを弾いてくれたけど、彼の歌声の方が私は好きだった。
八年の月日が流れた。
今や、私が兄のように慕っていたその人は、身も心もボロボロになっていた。
それでもまだ立ち上がろうとしていた。
その時はやってきた。
この国のために、いや、この世界のために私は生贄となるのだ。
そのために私は女王に即位させられたらしい。
私の中には特殊な血が流れていたから……。
刻一刻と迫りくる私の終わりの時。
その
薄れゆく私の意識。
断片的に彼らがお互い、対立している様が脳裏によぎった――。
嗚呼。
どうしてこんな事になったのだろう。そもそも一体なぜ、こんな悲劇が起きなければならなかったのか?
迫りくる世界の終焉。飛び立つ方舟。嗚呼、天使達が終焉の歌を歌いながらやって来る――。
斯くして、彼等の世界は終焉を迎えた。
だが、これはまだ、物語で言うところの序章が終わったに過ぎない。
それを知る者は誰もいない……。
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