第46話
いざ、うちに迎えられた女は、想像以上に厄介者だった。
基本的に無表情で何を考えているのかわからない。というか、俺の事を嫌っているだろう。
何が原因なのかはわからないが(思い当たる節があるとすれば名前を呼ばれた時のことか?)明らかに800万ザーウのためだけに俺の傍にいるようなので、どうしたらいいのかわからなくなった。
名前を聞いた時だって、ありえないほどに冷たいことを言われてしまい、俺は想像と現実の差に打ちひしがれる。
それでも、『ティア』という名前をあげた時、女はほんの少し嬉しそうな表情を見せた。(もちろんすぐ部屋を出て言ったのだが。)
まあ、嫌われていたって別に良い。俺はお前の両親を殺したわけだし、そもそも俺がいなければ、お前の両親は無事だったわけだ。
せめて、ほんの一瞬だけ、お前を平和な世界に留めさせてくれ。ただただそう願った。
意外にも、三日が経つころにはティアと仲良くなれた。
俺の態度が悪いと、ティアも機嫌を窺って態度を悪くしていたが、俺が楽しそうにしている時は彼女も楽しそうにしていたと思う。
原因はやはり俺にあったのかと思いつつ、どんどん俺に近づいてくるティアに内心戸惑っていた。
彼女が異世界から転生してここに来たというのは意外だった。だが、『やるべき使命を果たせば、前世に戻ることができる』という転生に関する話をどこかで聞いたことがあったので、そんなに驚かなかった。
それよりも俺は、彼女が前世に帰ることが心配になった。やるべきことを果たせば、彼女は確実に即刻前世に戻るだろう。(だって常に前世に戻りたそうにしているから。)
もちろん、記憶を失った彼女が前世に戻るために必要な条件も知っていた。
詳しいことはわからないが、転生は現実世界で転生者のことを思っている第三者がいることで成立するらしい。
ティアの本名は知らないが、現実世界の彼女に好意を寄せているやつがいる。俺にはそいつの記憶は無いがはそいつの変わりにここにいる。
俺が初めてティアに出会った時から彼女が好きだったのもそういうことだ。記憶はないが、ティアの前世の女が好きだった人が俺なのだから。
転生は憎しみや後悔など様々な第三者の意識がもとになって起こるようだが、恋愛感情が絡んでいると厄介だ。
理由は簡単。記憶を取り戻すためにキスが必要だからだ。
だいぶ無理のある設定だが、転生がそういう仕様なのだから仕方ない。
まあ、どうせティアから俺にキスすることもないし彼女は一生俺の側で生きていくのだろう。
転生を発生させた張本人の変わりに俺がこっちの世界で幸せになってやるよ。
だが、計算通りにはならなかった。
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