第36話
どうせレイ様は私のことなんて好きではないんだ。そう思って部屋にこもっていた時の事だった。
「おい…?ティア?入るぞ?」
コンコンと扉がノックされ、レイ様が部屋の扉を開けようとした。
まずい。今部屋に入られると泣いていたことがバレてしまう。
私は急いで扉に駆け寄り、扉を抑えた。
「ちょっ…。なにするんだよ!」
レイ様もそれに気づいて扉を押し、魔王対武道家の無意味な戦いが始まる。
当然ながら魔王様の圧勝に終わり、部屋に入ってきた。
「きゃぁぁ…。やめてください!」
私は急いでベッドに飛び込み、枕に顔をうずめた。
「こっちのセリフだよ。話の途中なのにいなくなるし、戻ってこないし…。」
声の距離感から推測するに、レイ様はベッドに腰かけているようだ。
というか、あの話は終わってなかったのか。
「やめてください。もう十分にわかっています。これ以上お話しされなくても理解はしていますから。」
レイ様の口から解雇を告げられなくても、もう十分にわかっている。だからこれ以上何も言わないでくれと思ったのだが…。
「いいやお前は分かっていない。」
空気が読めない男だと思う。わざわざとどめを刺すなんてひどいじゃないか。
「確かにお前はボディーガードとして頼りない。俺を危険にさらすし、俺に余計な心配をかけさせる。だから罰として…。」
レイ様は続けた。
「契約は延長してもらう。」
私は思わず顔を上げた。
レイ様は私の目をじっと見つめてさらに続けた。
「いいか?俺は魔王だ。人間は例外なく俺に従うんだ。もちろんお前も。」
つまり何が言いたいんだよ…。と口にせずともレイ様は眉を上げて悪い顔をして言った。
「たとえ命の危険がある仕事だろうと、お前に拒否権はない。」
まあ罰は罰だからなと言ってレイ様は笑う。
「どうせ終わるなら、最後までお前と一緒にいたい。俺が死ぬようなことがあればおそらくお前も死んでいるし、お前が死ぬならおそらく俺も死んでいる。」
レイ様はそう言って不愛想な表情をしていた。
私は思わず笑った。
「仕方ありませんね…。魔王様の命令なら、お引き受けしましょう。」
素直じゃないのが二人いると、結局素直になるらしいです。
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