聖都大決戦

とにかく急いで聖都に向かう俺達。周りにも馬で逃げている騎士達がいる。

「メリア!そちらにいるのは本当にグラジオラス様なのか!」

 一人の騎士が馬に乗りながら近付いて来た。

「ああ、間違いない。本物のグラジオラス騎士団長だ」

 メリアが言い切るとその騎士は涙を流した。

「本当にお会いできるなんて……私は昔騎士団長に村を救ってくれた恩があります」

 すると他の騎士も口々にグラジオラスへの恩や憧れを語り出した。

 その中でも一人鎧が違う騎士がグラジオラスに声を掛けた。

「ご無沙汰しております。グラジオラス騎士団長」

「お前はカンパニュラか!随分と歳をとったな」

「覚えていて下さったのですね」

「勿論だ。新人ながら誰よりも訓練を積んでいたからな」

「先程はグラジオラス騎士団長と知りながら剣を振り誠に申し訳ありませんでした。副団長としてここに謝罪します」

 カンパニュラは深く頭を下げた。

「いや、仕方ない。法王の命で騎士としての仕事をしただけだ。それに俺はこの通りデュラハンだ。気にするな」

「ありがとうございます」

「それよりもあのアンデットをどうするかが先決だ。聖都では防衛出来るか?」

「分かりません。なんせ聖都まで魔物は来たことが無いので」

「だろうな、私の時代も防衛装備は聖都に無かった」

「はい、騎士達と神聖魔法を使える者だけで何とかしなければなりません」

「奴が聖都に着くまで少しだが猶予がある。先に聖都に行き迎撃隊の編成を急いでくれ。それと市民の避難もだ」

「分かりました。グラジオラス様のどうするのですか?」

「奴に少し攻撃を仕掛ける。情報収集だ」

 そう言うとグラジオラスは集団から離れてアンデットの下へ駆けて行った。

「ウンスイはどうする?私は聖都に行き戦いに備える。お前に出来る事はあるか?」

 メリアがそんな事を言うとは思っていなかった。そのまま聖都に連れてかれてこき使われるかと思っていた。今の俺にはあのアンデットに出来る事なんて何も無いだろう。このまま戦闘は騎士達に任せて逃げるのも手だ。しかし……

「確かにああなったら説得も何も出来ないだろう。だがあのデカい奴の中にアコナイトがいるなら別だ。一発ぶん殴らないと気が済まない」

「分かった。このまま聖都に向かう」

 メリアは俺を馬に乗せたまま聖都に向かって駆けていく。俺達に残された時間はそれ程多くない。


 聖都に着いてからはバタバタと忙しかった。市民を大聖堂に避難させ、戦力になりそうな人材を集めた。

 その間俺はやる事もないので街の外で見張りをしてアンデットの様子を伺ってたり、とりあえず拾っておいたハンマーを振ってみたりした。

 こんなハンマーは中々の物でそこそこの石も簡単に粉砕してくる。

 これで俺も戦えるかと言うとそれは無い。まずあのデカいのに近付くのは怖すぎる。護身用程度にしかならないだろう。

 そんな事を考える俺の横にはリリーとカクタスもいる。二人は今聖都に入ると余計な混乱と誤解が生まれる為外で俺と待機となった。

 一応カクタスが出すスケルトンにもハンマーを持たせてみたが、女神の祝福とやらで持つ事が出来なかった。

「カクタス、あれはいつ頃ここに着くと思う?」

「正確には分からんが半刻もせずに着くだろう。避難も終わっておらんし状況はあまり良くないな」

「聖都には神聖な力が溢れてんだろう?それでどうにかならないか?」

「多少弱体化はするだろうが、なんせあの大きさじゃ」

「効果は期待できないと……」

 アレに近付く事は困難だから、やるとしたら神聖魔法とやらで遠距離から倒すのか?見たことないからどんなもんか分からない。

 ん?あれはグラジオラスか?偵察から帰って来たのか。

「避難の状況はどうだ!」

 グラジオラスは開口一番、市民の心配をした。

「全然だ。それより何か分かったか?」

「奴の足元に無数のアンデットがいる。それらもこちらに向かっている。それと額付近にアコナイトらしき人影が見えた」

 額付近は流石に見えないが足元に何かいる様に見える。

「私はカンパニュラに報告に行く!カクタス司祭は奴等の足止めをお願いします!」

「任された」

 グラジオラスは馬と共に大聖堂へと駆けて行った。

「さて、悪霊になって聖都を守るとは思わなかったのう」

 カクタスが呟くと同時に地面から大勢のスケルトンが現れた。向こうにはアンデットの大群、こちらにはスケルトンの大群。

 少しすると先陣を切るアンデットが聖都を襲撃した。聖都を守る形でスケルトンが応戦する。お互いを素手で潰し合うその様はまさに地獄絵図だ。

「待たせた!」

 後ろからグラジオラスの声が聞こえた。振り返ると騎士達や修道士、司祭を連れている。

 スケルトンが時間稼ぎしてくれたおかげで何とか編成が間に合った様だ。

「ウンスイ殿、状況は?」

「今のところ抑えられてるけどデカいのが来たら勿論無理だろ。小さいのもどんどん数が増えてるからここが突破させるのも時間の問題だ」

 俺は冷静に戦況を伝えた。

「グラジオラス!スケルトンの事は気にするでない。もろとも神聖魔法でやれ!」

「分かりました!」

 カクタスの意見を聞きグラジオラスは作戦を皆に伝える。

「聞いた通り、スケルトンは味方だが構わず奴等ごと魔法を当てろ!撃ち漏らしたアンデットを騎士達で殲滅させる!まずはデカいのが来るまで戦況を安定させるぞ!」

「「はっ!」」

 グラジオラスの命令を聞き騎士達は一斉に動き出した。

 騎士達が盾と剣を構えて、その後ろで司祭達が魔法を放つ。ここに来て初めて魔法を見るが光線の様なものが手から放たれている。

 それがアンデットに当たると蒸発した様にアンデットは消滅していった。

 次々放たれる光線にアンデットは消滅していくが同時にスケルトンも消滅する。そのポッカリと空いた隙間からアンデットが迫ってくる。

 それを前衛の騎士達が剣を振り倒していく。勿論グラジオラスもメリアも戦闘に参加している。俺は後ろの方で眺めているだけだ。ここまで来ることは無いだろうが護身用のハンマーは肌身離さず持っている。

 押し寄せるアンデットの大群を即席部隊で蹴散らしていくが、誰も安心していない。目の前にはどんどん近付いてくる巨大なアンデットがいるからだ。

 グラジオラスの言った通り額付近に何か人の様なモノが見える。

「魔法部隊は巨大なアンデットに一斉に魔法を放て!騎士は防御に専念しろ!」

 グラジオラスの指示により魔法部隊は巨大な奴に次々と魔法を放っていく。幾つもの光線がアンデットに当たり、焼けるような音が聞こえてくる。魔法が当たった箇所から白い煙が上がり、その煙が巨大なアンデットが見えなくなるほど包んでいく。

 執拗に魔法を放ち、徹底的に塵一つたりとも残さない。そんな気概を感じた。

「撃ち方やめ!」

 グラジオラスの指示で魔法部隊の動きを止めた。

 煙に包まれた巨大なアンデットはどうなったんだ。これで終われば楽でいいのだが。

 煙が風に流れその全容が現れた。

「無傷だと……」

 誰かがそう呟いた。俺だって思った。奴に攻撃が通用した様には全く見えない。

 今までただ歩くだけで何も行動を起こさなかったデカいアンデットが片腕を振り上げた。

 やばい!俺は直感した。そう思った瞬間大声を出した。

「逃げろ!逃げろ!逃げろ!退避だ!やばいのが来る!」

 大声を出しながら俺は走って逃げていく。俺に命令権は無いがそう叫ばざるおえなかった。

 背後がどうなっているかは分からないただがむしゃらに走っていく。

 背後から凄まじい轟音と地面からの衝撃が俺を襲った。小石が背中に飛んできて痛い。土煙が俺を追い越して行く。

 転びそうながらも何とか体勢を立て直して俺は振り返った。

 そこには騎士も修道士もスケルトンも、小さなアンデットすらも皆平等に無惨に倒れていた。

 

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