第6話 動き出す歴史の為に
「何で姉上とカルタス王まで…」
そう呟くのはエアウィング王国の若き王子ロヴェルトだった
「僕とミネルヴァだけで充分なんじゃ?姉上達にはすでに子供が居るのに…もうすぐ2人目が産まれるはずじゃ無かったっけ?」
王子の言葉にヴァスタレオン王も困り果てた様子で説得している
「じゃがキングナーガ城のランドクルーザー様が予言されたのじゃ…それを違えるのはどうかと…」
「先見の眼でしたっけ?ランドクルーザー様の能力は?あの方には何が見えたのでしょうか?」
「それが分かれば苦労せんよ…兎も角言われる通りに4人で魔物討伐の旅に出てくれんか?」
「まぁ父上の顔に泥を塗る訳にもいきませんからね…仕方ありません…」
一方その頃キングナーガ城では…
「お祖父様の命令ですからね…従うしか無いでしょう」
若き法王カルタスは祖父である先代法王ランドクルーザーの命令で妻のアンジェラと妹のミネルヴァ王女そして妻の弟で妹の婚約者であるロヴェルト王子と共に魔物討伐の旅に出る事になっていた
「貴方…私なら大丈夫よ…水晶眼で少し先の未来を見たけど危険は少ないみたいだから…」
「アンジェラ…身重の君が同行しないといけない理由がわからないのが嫌なんだよ…君には元気な子供を産んで欲しいのに…もし敵の目前で産気づいたら大事に成りかねないんだからね」
法王カルタスは妻の体調を気遣って不安になっている様子だ
法王カルタスとミネルヴァ王女の両親は2人が幼い頃に魔物に襲われて亡くなっていた
ランドクルーザーが先見の眼で未来を見たものの2人が亡くなる未来は変えられなかったらしい
その事をカルタスも意見して喧嘩になった事もあったのだがそれも先の未来の為に必要な事だったと言い聞かされたのだ
その事は今でもカルタスの胸にしこりとして残っているのだ
「兄様…大丈夫ですか?顔色が悪いですわ…少しお休みになられた方が…」
そうカルタスを気遣って来たのは妹のミネルヴァ王女だった
「ミネルヴァか…そうだな…明日に備えてそろそろ休むとしようか」
その夜ミネルヴァ王女は眠る事が出来なかった
婚約者のロヴェルト王子はまだ17歳だ
彼がもし亡くなればバードニール族が滅亡するかもしれない事を思うと胸が張り裂けそうで仕方なかったのだ
「伝説の双子の王子と王女が現れるのはいつなのかしら…どの種族に産まれるかも謎の話よね…」
翌朝…ヴァスタレオン王はロヴェルト王子をキングナーガ城へ送り出した
彼の思いは娘のアンジェラ王妃も感じ取っていた事だ
「お父様…きっと不安でしょうね…ランドクルーザー様が見た未来とは…この魔物討伐とどう関係しているのかしら?」
この時アンジェラ王妃は自身がのちに魔物に攫われる為の伏線になるとは夢にも思っていなかった
ランドクルーザーの先見の眼よりも能力が落ちる為に近い未来しか見る事が出来ないアンジェラはこの先絶望感に陥る事になるのだった
のちにこの出来事をランドクルーザーは世界の為に必要だったと言い聞かせていたのだった
違う可能性に賭ける勇気が無かったとのちに語った
これさえも魔王により意識操作された結果なのには誰も気づいていない
それだけ魔王の力が巨大だと言う意味である
ただアンジェラは何か得体のしれない力に動かされている事に薄々気づきつつあった
それが確信されるのは彼女が魔王の手のものにより攫われた後になるのだった
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