とある趣味作家の日録

夜桜月乃

ねこたろう

 これは、中学校を卒業した、春休みのことです。


 私は大量に積みあがった高校の教科書を片付けるために、部屋の整理をしていました。いや多いな教科書。


 ついでとばかりに要らないものを捨てようと、片付けどころか逆に部屋を散らかしていた時、私は小学校の時に作ったものがまとめられているファイルを発掘しました。


「……ねこたろう」


 なにやらきたねぇ字でプリントに文字が書かれています。


 私は片付けすることを一度辞めて、その文章を読み始めました。



 昔々、地球のある所に、人ではなく、ねこが支配している国がありました。


 いやねこが支配してる国ってなに。しかも地球。


 ある時、ねこばあさんは芝刈りに

「じゃあ、行ってくるとするかにゃー」

 ねこじいさんは川へ洗濯に行きました。

「わしも行くとするかのー」


 いや逆だろ普通。てかねこ水大丈夫なんですか。


 ねこじいさんが川に着くと、どんぶらこーどんぶらこーと、ねこが嫌いなみかんが流れてきました。ももじゃないんかい。


 ねこじいさんは

「これじゃあ、洗濯ができんのー」

 と言いました。


 ……でしょうね。クソでかみかん流れてきたらそりゃ無理ですよね。


 ところが、みかんはだんだん近づいてくるではありませんか。


 あ、本格的に洗濯できませんねおじいさん。


 ねこじいさんは仕方なく、びしょぐちょみかんを背負って家に帰りました。


 あ、わざわざどけて洗濯するんですね。えらいですね。

 でも、家に帰らなくても、ちょっとどけるだけで良かったのでは?

 えらいけどバカですね。


「重いし濡れてるしで最悪だにゃー」

 と、ねこじいさんは独り言を言いました。


 ……でしょうね。


 しばらくして、ねこじいさんは家に着きました。ねこばあさんは既に家に居ました。


 それから一時間後、みかんを食べることなく時間は過ぎました。


 ……なんで放置してるんですか捨てましょうよ嫌いなんでしょ。


 そして、ねこじいさんとねこばあさんが話していると、ぱっかーんとみかんが割れました。いや自分で割れるんかい。


「わっ」

「おー」


 いや反応うっすぅううううう!


「ミー」と子猫が生まれました。果汁まみれで大丈夫なんですか君。


「うれしいにゃあ」

「うれしいにゃあ」

 と、喜びました。


 お二方、赤ん坊、果汁まみれですよ?


 それから一か月がたち、子猫はねこたろうと名付けられ、立派に育っていました。ちなみに猫にとっての一か月は人間にとっての一年らしいです。


 ある日、ねこたろうは

「おにたいじにいきたーい」

 と言いました。えらく唐突ですね。


 そのころ、鬼たちは村から娘をさらったり、宝を奪ったりしていたりと悪さをしていたのです。


 ねこばあさんはその勇気に感動して

「行ってきな」

 と言いました。


 ……ノリすげぇ軽いですね大丈夫なんですか。

 というか、多分ねこたろう無邪気なだけですよ。


 そしてねこたろうはまぐろの切り身と刀を持って、鬼退治の旅に出かけました。


 何度でも言いますが、彼、人間換算で一歳です。

 ちなみに猫は魚より肉の方が好きらしいです。日本が海と身近だからそういうイメージなだけで。


 そして、百メートルほど歩いたところで、まぐろの匂いに気づいたイヌ、タカ、ネコが近づいてきて

「「「まぐろちょーだい、仲間になるよ」」」

 と言いました。


 ……ちっかぁああ!

 いやメンバーよメンバー。キジじゃなくタカ!サルじゃなくネコ!ネコ二匹やんけ。相変わらず鬼退治のノリ軽いし。


 ねこたろうはいいよと言いました。食料あげちゃっていいんですか。


 そして五日後、とうとう鬼ヶ島に着きました。


 ……刺身腐ってません?


 門は開いていてすんなり中に入れました。管理杜撰。


 鬼たちは宴会を開いていて、円を描きながら踊っていました。


 ねこたろうたちは岩陰に隠れて、そこに落ちていた石ころを鬼のボスの頭に当てました。

 ボスにはねこたろうたちが見えていなかったため、部下と取っ組み合いを始めました。


 ……もしや鬼たちアホでは?


「誰だ!俺の頭に石当てたやつはー!」

「「「違います!僕(私)たちじゃありません!やめてください!」」」


 鬼の部下よわそー。てか女性の鬼もいるんですね。


 そして、

「かくごー」

「キィー」

「ワン」

「ニャー」

 と、鬼のボスをみんなの渾身の一撃で倒しました。


 ……ボスよぇえええ!!!


 そして、攫われた娘と奪われた宝を持って、家に帰りました。


 めでたし、めでたし。



 ……なにこれ。


「ちょっとおもしろいのなんなの」ツッコミどころが多すぎますね。


 ふとこのプリントが入っていたファイルを見ると、読書感想文も一緒に入っていました。一瞬で脱字見つけました。


 さて、そんな桃太郎のパロディ作品を作ったのにもかかわらず、読書感想文で脱字かましている、「なつかし」なんて呟いてる小さな作家さんとは誰なんでしょうか。


 ……思ったより前から執筆してましたね、私。



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