第6話(七)

「昨日、間宮くんうち来てたの?」

「───────」

 翌朝───。

 朝ごはんの最中に母親が聞いてきた。

「───うん」

 嘘は付けずにうなずいた。

「帰っちゃったの? 朝ごはん一緒に食べてけば良かったのに。どうせ今朝も迎えに来るんでしょ?」

 何してるの? と不思議がられて、昨夜のことを思い出した。

 いろんな事後、天音さんから間宮に電話があった。そろそろ帰った方がいいとのことで、日付が変わる時間帯に間宮が帰って行った。

 夜も遅いのにと心配だったが、無事着いたとの連絡ももらった。

「もしかしてあちらの親御さんには言ってないの?」

 母親の言葉にギクリとした。

「言ってないんだ」

 感良く続けられて、呆れたとため息を付かれてしまう。

「でも……バレてないって言ってた」

「そういう問題じゃないでしょ。これからもあるんだから止めなさいよ」

「……わかってる」

「ほどほどにしなさいよね」

「………………わかってる」

 昨日だけって言って、味噌汁をすすった。

「あれねー、なんだかんだ真純の方が間宮くんにぞっこんなのねー」

 ブホッと味噌汁にむせた。

「な、なんでだよ!」

「だって呼び出したの真純でしょ」

「そうだけど! 違うっ、逆だってばっ」

「逆って何よ? そう思い上がってると後で痛い目見るわよ」

「……痛い目ってなんだよ」

「嫌われるかもよー」

 にんまりして母親が言う。俺は言葉に詰まった。

「……………………嫌われたりしない」

 それだけ言って、難しい顔をしながら箸を動かした。たぶん面白がっている母親の顔は見られなかった。


 * * *


 ───放課後。

 学校の門の前に天音さんがいた───。

(……目立ってる)

 家路を急ぐ生徒らが必ず天音さんを凝視していった。

 なんとなく疲れを感じ肩の力が抜けた。隣にいる間宮は完全に言葉を失っている。

 俺らを見つけて天音さんはにこやかに手を振った。さらにこっちにも注目が集まった。

(…………………なんだかな)

 諦めの境地で天音さんに近寄った。

「お久しぶりです」

 少し迷ってから、

「……………昨日はすいませんでした」

 と続けた。

「いいのよ。ただ……」

 天音さんは言葉を切ってにっこり笑った。

「…………………」

「…………………」

 沈黙が怖くて、俺は妥協する。

「いいですよ……なんでもしますよ」

「そう? 助かるわ~。またモデルになってくれる? 真純くんがつけてくれたあのシリーズ今までで一番売れ行き良かったの」

「……それ俺のせいじゃないんじゃ」

「いやいや、ちゃんと真純くん貢献してるわよ」

 そーかなと思ったが、「はぁ……」とうなずいた。

「とりあえず帰ろうか」

 と天音さんに促されて、周りの視線にも気づいて俺らはその場を離れた。

「理玖は後ろ歩いて」との天音さんのお達しで、天音さんと並んで歩くことになった(間宮は不服そうだったが)。



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