第4話(十二)

 ───身体がダルい。

 カーテンからはすでに明るい光が射し込んで来ている。

 少し寝れたが、散々朝方まで挿入されていた後ろは違和感があるし、脚は変な体勢もあったせいかつった感覚があるし、胸と性器は「そんなに自分でいじるの気持ち良かった?」と、間宮にしつこくいじられたり舐められたりして、意識せざるを得ない感じで、部屋着の布地に擦れて敏感になっていて、ベッドでぼんやり目を覚ました今も、自分じゃ自由に身体を動かせないし、まだ……されている感じが強くて、どうしたもんかと思ってしまう。明日……って、今日か。学校あるんだけど……。

 ───満足感もあるのも、本当なんだけど……。

 まだ隣で寝ている間宮に視線をやって、ちょっと赤くなって思ってしまう。

(気持ち良かった……)

 満たされた感じで、整った顔立ちで寝息を立てているのを覗き込む。こうして寝顔を見るのは始めてだった。前回は逆で、目覚めると間宮がずっと俺のこと見ていて───正直少し怖かったりしたんだけど───覗き込みたい気持ちがわかった。無防備なのが良いなぁと、ついつい観察してしまう。睫毛長いな、とか肌きれいだな、とかしばらく見ていて───寝ているのを確認して───触れるだけのキスをした。

「……………」

 顔が熱くなってしまう。間宮には内緒だ。

 ───ふと、

 ベッドサイドに間宮のスマホがあるのが目に留まった。

 嫌な予感がした。───その、スル前はここになかった。

(何撮ったんだよ)

 チラリと間宮を確認して、スマホを手に取る。

 中を確認しようとして、暗証番号を入れなくてはいけないみたいで───思い付きで俺の誕生日を入れてみる。

(……開いたよ)

 馬鹿なんじゃないか、こいつ……。

 しょうがないなぁ、と突っ伏してから、中を確認しようとして、

「ちょ……っ! 何やってんのっ?」

 間宮が起きて、慌てた様で俺の手からスマホをもぎ取った。

「つーか、暗証番号俺の誕生日にしとくなよ、お前。人に見られちゃダメなやつもあんだろ」

「なななないよっ、大丈夫だよっ、暗証番号は変えるよ! 真純にバレたから! つーか、中身見たっ?」

「見てないよ。だから見られちゃ困るんかよ」

「困んないけど! あーもう」

「だいたいなんで今ここにスマホあるんだよ。何撮ったんだよ」

「……何も撮ってないよ」

 間宮は目を泳がせた。嘘だな。

「お前いい加減にしろよ。少しだけでも見せろ」

「……………」

 しぶしぶ間宮が指を動かし、画面を俺に見せた。

 ───昔の、中学のときの制服を着た自分が写っている。カメラに気づいた様子もなく、隠し撮りの一枚だ。

「……誰撮ったんだよ……って佐々木か。あいつとは一度ちゃんとケンカしなきゃな。ってかお前写真全部消すって言ってなかったか? ……あとは?」

 次の写真を促すと、間宮が渋る。

 だが数枚似たような感じのものを見せて「もういい?」と締め括ろうとする。

「まだ最近のがない」

 じれったくてスマホを奪おうとすると、その手を捕まれる。

「そんな変なの撮ってないって。大丈夫だから」

「それは俺が判断するから」

「んー……」

 間宮がちょっと考えて、つかんだ俺の手に口付けた。

「っ、お前そういうごまかしやめろよなっ」

 カッと赤くなる俺に、間宮がニッと笑う。

「変なの、期待してるなら、ハメ撮りしてもいい?」

「……はめどりってなんだ? ……って、いい。どうせロクなもんじゃないだろ」

 いいから離せ、と続ける俺に、間宮は満足そうに目を細めて、

「夏休み、旅行行こうね」

 と話を変える。

「いいけど……お前大丈夫なの? 親。とか旅費とか」

「テストの結果良かったから、たぶん大丈夫だよ」

「ふーん」

「───ところでさ」

 俺の指先を握りながら、間宮がニンマリささやく。

「またキスしてくれると嬉しいな」

「─────」

 ぽかんとして───、カッと頭に血がのぼる。

「お前いつから起きてたんだよ!」

「真純的にはいつから起きてたら良かったの?」

「お前ふざけんなっ、」

 ───結局、間宮のいい様に事が進んでしまうのは、いかがなもんかと思う。ほんとに!




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