第10話 市野菘の場合ー天使と悪魔の財布(終)ー
「おはよー。あれ、菘今日はすっきりしてる?」
蜜柑はいつものようにリンゴジュースを片手に机の前にやって来た。
「まぁ、そうだね。なんていうかさ、そんなもんだよね」
少しはぐらかしながら菘は答えた。
昨日、グダランティーヌたちは散々話し合った結果、桜の「菘が決めたらそれで正解だよ」の一言であっけなく解散してしまった。本当にグダグダとダラダラと話をしただけであった。それでも、桜の言った「菘が決めたことが正解」というのが、妙にしっくりときたというか、少しだけ自信が持てたというか。
「それならよかったよー。じゃあ、喜びのリンゴジュースを!」
蜜柑から手渡されたそれを口に含む。いつもと同じ、酸味と甘みが口に広がると一気に飲み込んだ。
どうにもこうにもならないことで悩む人もいれば、そんなことでと思うようなことで考え込む人だっている。人それぞれなのだ。そのそれぞれの話を聞くと、自分の存在がちっぽけに見える。財布を届けるかどうか。レベルは低いかもしれないし、即答で答えを出せる人もいるだろう。けれど、菘自身にとってそれが問題と言うわけでではなく、のどにひっかかったものを吐き出せる場所のありがたさを痛感することができた。
財布の持ち主は現れるだろうか。まぁ、現れようが現れまいが、菘の日常はただ進んでいく。
みなさんは財布を届けますか?それともネコババしちゃいますか?何が正しいのか、そうでないのか。簡単にはわからないかもしれないけれど、こうやって答えを出す青春もいいんじゃないでしょうか。
菘もきっとこれで少しは成長できるのかも?ほかの3人もきっと成長するんじゃないかな?と、しがない語り手は思っております。
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