第37話 これくらいで文句言うな

アイリは屋根から下り、男と泥棒に近づく。


「よっと。あ、ありがとうございます。止めてもらって。私の荷物もやっと回収できます。」


「これ君のだったんだ。こいつどんだけ罪を重ねてるんだぁ?…まぁいいや俺はこいつを連れてくぞ。」


男が掴もうとすると泥棒は意識を取り戻した。


「ぐぞぉ…痛ぇ、クソォ…ぶっ殺してや…」


「あ?」


男は泥棒の首を持ち睨みつけた。


「テメェが色んな人間に手ェ出したのが悪いんだろ。これくらいで文句言うな。」


「ヒィッ‼︎」


泥棒は大人しくなった。


「あ、そういえば名前って聞いてもいいですか?」


「名前?キラ。」


「キラさん。ありがとうございました。あなたのおかげで大切なものを取り返すことができました。」


「そうか。じゃあな。」


キラは泥棒を引きずりながら去っていった。


(…悪いのはあの泥棒なんだけどねぇ…。なんか怖いなぁ。あのキラって人。)


そんなことを思いながら店へ帰った。


「ただいまー!」


「遅ーい!どこで道草食っていたの!」


「み、道草じゃなくてちゃんと事情はあるから。」


「言い争ってないで早く手を動かしてくれ!客が溢れてるんだ!」


2人は夜の客が減る時間帯まで手伝い続けた。


「へぇ、そんなことがあったんだ。ごめんね、道草食ってきたとか言って。」


「別にいいよ。遅くなったのは本当だから。」


「でも盗人かぁ。うちの店も気をつけないとなぁ。」


「それは大丈夫だよ!キラって人が捕まえてどこかに連れていったから!」


「キラ…。あー、あの人か。戦士隊隊長の右腕。」


「そんなすごい人に会ってきたんだ。」


「ちょっと怖かったけどね。」


「まぁそれなら安全そうだな。2人とも今日はありがとうな。2人がいなかったら店回らなかったよ。またよろしくな。」


2人の忙しい初日が終わった。

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元社畜が開く何でも屋 〜しょうもないことから危険なことまで何でも承ります〜 ティコン @konoyuichiro1025

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