第36話 ちょっと暴力的だけど
泥棒は後ろをチラッと見たがアイリの姿がなかった。
「おやおや〜。諦めたかな〜。」
「そんなわけないでしょ!早く返しなさーい!」
「チッ、まだ来んのかよ。お前じゃ追いつけないんだから諦めろよ!」
「いーや追いつく!この先は人混み、止まるしかないよ!」
「人混みって…そんなので止まると思ったのかぁ?」
「なんだって、やれるもんならやってみな!」
「じゃお構いなく。」
「え?」
泥棒は滑りながら回り始めた。
「何あれ、バカなの?」
「まだまだこんなもんじゃないぞ、基礎魔術『ファイア』‼︎」
片手で火を出しながら回転し始めた。範囲は広くないが普通に危険。あんな状態で人混みに突っ込んだら大騒ぎになる…。
「オラオラオラ、どけどけどけー。俺の炎で焼いちゃうぞー!焼かれたくなかったらどけー!」
なんとも子供らしい言い方で人を退かす泥棒。こんな方法でも人は道を開けた。
「はーはっはっは、じゃあなクソガキ!これはいただいてくぜ!」
「うそー、人混み足止め作戦が失敗しちゃった。どうしよう…。ん?」
アイリは反対側の家の屋根に取れそうな瓦を見つけた。
「ちょっと暴力的だけど…これくらいいいよね。私の力で瓦を取り外して、回転シュート‼︎」
アイリは瓦を回しながら泥棒の方に投げ飛ばした。
「痛っ、ってうぉお!」
足に瓦が当たった泥棒は体勢を崩して転んでしまった。
「ナーイスヒーット!さぁ、さっさと返しなさい!」
「クッソ、捕まってたまるか!痛。」
泥棒が立ち上がると前から来た人にぶつかった。
「騒ぎを聞きつけてきたが…お前かこの騒ぎを起こしたのは。」
「うるせーよ、さっさとどけ!くらえファイア!」
泥棒はぶつかった人に向かって火を放った。
が、ぶつかった人には全く効いてなかった。
「これはこいつが黒で間違いないな。あいにくお前程度の火力じゃ俺にダメージは与えられないぞ。」
「ざけんな!」
力の差は明白になったがまだ攻撃を続ける泥棒。
「抵抗するんだ。とりあえず牢の中に入れるから、一旦おやすみ。」
男は拳を受け止め首元を叩いた。泥棒は倒れるように気絶した。
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