第3話 ミュータントを狩ろう!!


 トラクトを乗せて運べる船、カーゴシップを引っ張り出して来て俺のルストとイノシのトラクト、ボアを載せて農場を出発して近くの村にたどり着く。


 「で、取り敢えず近くの村に来たんだが、どうしたんだここは?荒れ放題じゃないか。ユニク、近くの酒場に行ってくれ。話を聞きたい。」


◇ ◇ ◇


 俺は酒場にトレーラーを止めてよく知るのマスターに話しかける。

 

「ようじいさん。都会のニュースの後に早速バカが暴れ出したみたいだな。」


「アンタは……山の農場のセイウチか。補給なら諦めな。都会でクーデターが起きたからって火事場泥棒が押し寄せて来てこのザマさ。燃料や食料はぜーんぶオーガンザとか名乗る山賊がかき集めて行ったよ。見な。」


 酒場の窓から見える、村にある数少ない畑は荒らされ、さらに遠くに見える牛や羊を飼っていたであろう厩舎には改造されたトラクトが5台鎮座していた。


 町は若者が仕事を探しに町に出ており、ほとんどが老人で抵抗する間もなく占拠されたのだろう。


「ヒャッハー!!てめぇら何処から来たぁ?食料と燃料!それとカーゴシップとトラクトを寄越せぇ!」


 ドカドカドカドカ酒場にチンピラが乗り込んで来る。


「あっ!てめぇはイノシ!じゃあ表のカーゴシップはお前の戦利品かぁ?」


「誰がこんな奴にアレをくれてやるかよ。ありゃ俺たちのだ。お前らもバカな事やってねぇで働け!」


 俺のセリフにチンピラ達が色めきだつ。

 「バカにするなよ!!」とナイフを抜いたり銃に手を掛けたりしながら俺を威嚇し始める。


「おい、イノシ。お前こいつらの仲間だったのか?」


「あぁ、まあ行くトコなくて惰性でズルズルとな。だがこいつらアホでさ。どっかほかに面白い奴が居ないかなと思ってたんだ。」


「やけに素直に仲間になると思ってたらそう言うことかよイノシ。裏切り者は信用されなくなるぞ?」


「そこは行動で示すさ」


 そう言うが早いか、立ちあがったイノシは先ほどまで座っていた椅子を振り回し、チンピラを薙ぎ払う。


 デカい図体を活かしたパワープレイで不意を突かれたチンピラが銃を撃とうとしているのを察し、俺はジョッキをチンピラの頭に投げつけた。


 酒場の入り口では後から来たユニクが電気銃で数人のチンピラを感電させていた。


「アンタら。どうせならこいつらのボスをぶっ飛ばしてくれんか?報復されたら敵わんし、何より牧場と農場を占拠されてたら仕事にならん。報酬は酒樽一つでどうだ?」


「乗った!オマケで干し肉も付けてくれ!」


◇ ◇ ◇


 しっかし、本来ならガードが本職の戦闘用トラクト乗りの部隊がすぐに駆け付けて来るからこういう事は起こらないんだが、その都会が大混乱に陥っているからな。ここぞとばかりに攻めてきたんだろう。

 

「おーいオーガンザくーん!!ここのボスはオーガンザって言うんだろ?出て来なよ!村の人たちがお前達に困ってるんだとさ!!」


 俺の声がトラクトの運転席に備え付けられたマイクを通してトラクトのスピーカーから大音量で流れ出す。

 すると農場の奥からオーガンザが乗っているであろうトラクトが現れる。巨大な鉄板を両腕に装備して派手の蛍光グリーンをしたひときわ目立つトラクトから酷いダミ声が返ってくる。


「酒場で子分どもをのした野郎ってのはてめぇか?それにイノシ!お前俺達を裏切ってタダで済むと思うなよ?!」


「まあそう言うなよ。お前達をブチのめせば酒樽一つくれるってんだ。やらない手は無いだろ?」


 俺のセリフにオーガンザがブハハハハと笑う。


「あの酒場にまだ樽が1個あったのか!!じゃあお前をブチのめして勝利の美酒と行こうや!」


 コイツ俺に勝った時の事を考えてやがる。気に入らないな。


「それじゃあ行くぞ!このっ!」


 俺のルストが拳を握り派手な蛍光グリーンのトラクトに振り下ろすが、両腕の鉄板にガキィン!と防がれる。


「今だぜイノシ!!」「おう!!」


 そう気持ちいい返事をした後にイノシのボアは俺に向かって突進してきた。オーガンザのトラクトとボアに挟まれてサンドイッチ状態になって機体が軋みを上げる。


 「ガハハハ!こう治安の悪い世の中でああいう飛び地の農場が人が少なくても回せる理由はお前だろ?セイウチ。おおかた昔は軍人だったりしたのか?チンピラ相手ならお前1人で片付けられてたから油断したなぁ?さぁキドン!盾で押しつぶすぞ!!」


「なるほど。存外バカじゃないらしい。それでイノシを送り込んで来たのか。だがっ!!踏ん張れ!ルスト!!」


 キドンの緑色の盾を両手で掴み、ハンドルを回す様に捻る。ギチギチと音を立てながら腕があらぬ方向に曲がって行く。


「クソッ!!お前のトラクト、なんてパワーだ!もう右腕が千切れそうだよ!オイ!イノシ!さっさとコイツを引き剥がせ!」

 

「そ、それが脚の反応が悪くてなかなか動かないんでさぁ!!」


 そこで俺にカーゴシップから通信が入る。


「ユニク、お前やったな?今回は助かった。チョコバー2本やるよ」


「いいや3本だ。」「2本とキャンディ!」「3本!!」


「うるせぇ!!イノシに何しやがった卑怯者!!」


「どっちが卑怯者だぁぁぁ!!」

 

 卑怯者というセリフにカチンと来たから全力で盾をねじり取ると、そのままその板の角でキドンをしたたかに打ち付ける。


 バゴォーン!と凄い音の後にひっくり返る。すぐに後ろでぎこちない動きになっていたボアにも盾を振り下ろす。


「ふぅ、今夜は久々にうまい酒が飲めるぞ」

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