第14話
シーン3 side つくも
助けが来るのか来ないのかについては運次第そんな空気を感じ取ってつくもはペンライトを頼りに少しだけ周辺を歩いて確かめてみる事にした。
その為に先ずは足場を照らす。場所によってかなり瓦礫が不安定に積み重なっているのが見て取れ軽く足で触れると瓦礫が脆く崩れる箇所も在った。
崩れる瓦礫を見てもしかしたら下が空洞になっていて更に落下するかもしれない可能性も頭に過るが仮に救助が来た時に距離が離れていたとしたらそこまでは確実に歩かないといけない。
その場合の為にも足場の安全性は事前にある程度は知っておくべきだと思った。
そんな事を考えながら先ずは軽く一歩、歩いてみる。
「一応、言っておくと下に空洞は無いよ・・多分」
その様子を見ていたのか後ろからそんな軽い感じの声が聞こえて来た。
「何でそんな事が分かるんだ」
話しかけられるとは思っても無かったので思わず相手の方に振り返る。
言葉の最後の方は何故か自信なさそうに濁したがその割に空洞は無いと発言で出来るその理由は何なのか。
今現在、つくもの荷物は紛失してしまったが仮に残っていたとしても外から中の状態を確認できるアイテム等、当然事前に用意していなかった。
なので何故、こんな急な災害なのにも関わらずこの妙な用意の良さは何なのだろうと疑問が浮かぶ。
そう思いながら相手を見ても話し掛けてきた割にこちらを見る事もなく今は暇そうに手で瓦礫をいじっていた。
「千里眼」
暫くその様子を見ていると唐突に意味不明な単語を口にした。
少ししてからもしかしてそれがさっきの質問に答えなのかもしれないと思い至る。
ただそこまで考えたところでそれが何を意味するのかはさっぱり分からなかった。
そんな意味不明な単語だけを呟いた後も特に変化なく今もつまらなそうに小さめの瓦礫を持ち上げるとそれを遠くに投げる。
「・・・」
つくもは何も言わずに意味も無くそれを見ている。
それから暫くして視線に気が付いたのか新しい瓦礫を探していた手が止まってふっと目線が上がってこちらに向いた。
「だって技術者がそう言ってたんだもの」
改めてそう言及したので千里眼と言うのは何かの名称を指す言葉なのかもしれない。
つまり名前が千里眼という何かしらの機械と言った所だろうか。
「さっきまで私もそうやって歩きながら千里眼を使ってたけど異常な反応は返ってこなかったからね」
そう続いた言葉を聞いてどうやら大体は思った通りでつくもが意識を失っている間も彼女は活動していて既に周辺のチェックを済ませているようだった。
しかしその千里眼とやらがあるのであれば。
「そんなモノがあるのならそれを使って自分で脱出できそうな場所は探せないのか」
地面側が調べられるのなら当然、壁だって同じ要領でチェックできるはずだと思うが何故それをしていないのか。
「んーまあ、そうなんだけどねー。どうもちゃんと充電してなかったせいかバッテリーが切れそうなんだよね」
やはり装備だけはちゃんと持ってはいたようだが整備不十分で使えないらしい。
つまりその千里眼とやらに今は望みを掛けられそうにないという事なのだろう。
「バッテリーて使ってなくても無くなるんだね。知らなかったよ」
そもそも充電式の仕様をちゃんと理解していないらしい。
「予備のバッテリーとかは・・」
念のためにそう確認をしてみる。
「うん。みんな切れてた」
それに対しても清々しいほど潔い言葉が返ってくる。
「それにそもそも繋ぐケーブルの自体、入って無かったし」
更に続いた言葉にはもはや呆れるしかなかった。
しかしそれだけ抜けているとすると彼女の確認作業にも若干疑いを持ちたくなってくる。
後、その使用していたらしいツールにもどの程度の信用性があるのかもつくもには判断しにくい。
だからと言って現状つくも自身で調べたところでそれがどこまで正確かどうかも分からないのも事実。
結局、何も分からないというところに戻っただけなような気がした。
それからどの程度の時間が経過したのかしていないのか。
このペンライトの明かりだけが頼りの閉鎖された空間ではいまいち正確な時間の感覚が分からなくなる。
それでもつくもは既に周辺を歩き終えて今は一つの壁際まで来ていた。
幸いなことに歩いた先で足場の瓦礫が大きく割れて穴が開くことはなかった。
試しに軽く壁になっている瓦礫を叩いてみるが外側の軽い破片が転がり落ちただけで奥の方でしっかりと挟まれているモノに変化はなさそうだしその向こうに開けた空間があるのかどうかも当然、分かるはずもない。
なのでこのままこうしていてもやはり何の変化も起こらないのではないのか。
そんな風に考え始めた時近くで何かが大きく崩れる音と眩しいほどの光が突然つくもから少し離れた壁が崩れてそこから差し込んで来た。
「あ、来たかな」
それに驚いたつくもとは対照的に直ぐに行動を起こして立ち上がると光の指す方に向かって行った。
「遅いぞー」
開いた穴と差し込んだ光に向けてそんな言葉をかけながら手を上げてアピールしているようだ。
その反応だけを見るならおそらくやって来たのは当てにしていた仲間と言う事なのだろうと思うがまだ相手の確かな姿は見えていない。
つくもはまだ判断が付かないのでとりあえずは居た場所からは動かずに静かにサーベルを持っていた手を後ろの方に下げて握り込んでいた。
暫くするとその光に影が差して誰かがこちらに向かって歩いて来るシルエットが浮かび低めの声が聞こえて来た。
「置いてくぞ」
今、助けに来たはずなのにその第一声からはまるでその気が無い発言が飛び出していた。
とはいえそれは普段から軽い冗談を言い合っているような軽いノリからくる返答のようでもあった。
「たすけてよぉ」
穴から入って来た人物と近くまで行って合流した二人が軽く挨拶の様にそんなやり取りを暫くしてからようやくつくもの方に視線を向けて来た。
「あなたがつくもさんですか」
まだちゃんと名乗ってすらいなかったのに後から助けに来た男の声がはっきりとそう告げてきたことに驚いているとその男の隣に居た仲間も何故か驚いていた。
「え、この人が探してた人だったのか」
そう言われて何故か二人はつくもの事を知っていて更に探していたらしい事が発覚したわけだが理由は不明である。
勿論、つくもに二人との面識はない。
相手の顔もまだフルフェイスで隠れて見てもいないし少なくとも声に覚えはない。
勿論、ボイスチェンジャーを使っている可能性もあるかもしれないが・・。
そんな疑いのまなざしを向けていると男の方がフルフェイスの顎の固定を外してそのままフルフェイスに手を当てて上に引き上げた。
ただ、つくもの今いる位置は完全に逆光なのでやはり顔は見えない。
「あ・・眩し」
男に合わせる様にその隣でも同じようにフルフェイスを取った女の方は改めてその強いライトの光に当てられたのか顔をそむけた。
「お前たちは一体・・」
状況がいまいち理解できないがどうやら相手に今の所、敵意だけはなさそうではあった。
「お時間があるようでしたらあなたをある場所に招待したい」
「大丈夫、怖くないよぉ」
そう誘われた所でその得体のしれない相手の怪しい誘いに直ぐに返事なんてできるはずもなく寧ろ少し二人から距離を取るように後ずさった。
「余計な事、言ってないでお前は黙っとけ」
男が女にそう注意したが女は「いいじゃん」と不服そうにしていた。
デッドエンドサバイバル 影月 @kage-tsuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。デッドエンドサバイバルの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます